2020/8/25、急性肺塞栓症の外科的管理後の右室機能と生存率の関係について調べた研究「Survival and Right Ventricular Function After Surgical Management of Acute Pulmonary Embolism」の要旨をまとめました。

2020/8/25、急性肺塞栓症の外科的管理後の右室機能と生存率の関係について調べた研究「Survival and Right Ventricular Function After Surgical Management of Acute Pulmonary Embolism」の要旨をまとめました。急性肺塞栓症(pulmonary embolism: PE)は右室不全を来した場合、高い死亡率と関連しています。外科治療、外科的血栓除去術(surgical embolectomy)、静脈動脈体外式膜型人工肺(venoarterial extracorporeal membrane oxygenation: VA-ECMO)の有効性、安全性のエビデンスについて、急性肺塞栓症の外科的管理の有効性、安全性を調べるために、2005年から2019年まで、広範型肺塞栓症(massive pulmonary embolism: MPE)、ハイリスク準広範型肺塞栓症(high-risk submassive pulmonary embolism: PMPE)、外科的血栓除去術、静脈動脈体外式膜型人工肺を比較しました。右室の回復は、中心静脈圧、肺動脈収縮期圧、右室/左室比、右室機能領域変化率の改善として定義しました。結果、肺塞栓症136例、ハイリスク準広範型肺塞栓症92例、広範型肺塞栓症44例を特定しました。広範型肺塞栓症は失神の頻度が有意に高く(59.1% [26 of 44] vs. 25.0% [23 of 92]; p = 0.0003)、Glasgow Coma Scaleスコア4以上の意識障害の頻度が高く(22.7% [10 of 44] vs. 0% [0 of 92])、血栓溶解療法の失敗率が有意に高く(18.2% [8 of 44] vs. 4.3% [3 of 92]; p = 0.008)認めました。手術前の心肺蘇生の発生率は広範型肺塞栓症44例中19例(43.2%)でした。ハイリスク準広範型肺塞栓症のほとんどは血栓除去術によって治療(98.9% [91 of 92])、一方で、広範型肺塞栓症では体外式膜型人工肺44例中18例(40.9% [18 of 44])、血栓除去術(59.1% [26 of 44])でした。右室機能の改善は、中心静脈圧(from 23.4 ± 4.9 to 10.5 ± 3.1 mm Hg)、肺動脈収縮期圧(from 60.6 ± 14.2 to 33.8 ± 10.7 mm Hg)、右室/左室比(from 1.19 ± 0.33 to 0.87 ± 0.23; p < 0.005)、右室機能領域変化率(from 26.8 to 41.0; p < 0.005)でした。死亡率は4.4%、ハイリスク準広範型肺塞栓症136例中6例(1.1%)、広範型肺塞栓症44例中5例(11.6%)でした。サブグループ解析では、死亡率は手術前の心肺蘇生と関連していました。広範型肺塞栓症、ハイリスク準広範型肺塞栓症の外科的管理は安全で有効で、右室機能改善を達成しました。詳しくは論文をご覧ください。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32819463
急性肺塞栓症の最重症型が広範型肺塞栓症(massive pulmonary embolism: MPE)では、心肺蘇生実施率43.2%、ECMOの使用40.9%、死亡率11.6%との報告です。血栓症が心配で、と言いつつ喫煙、低用量ピル内服している方がしばしばいますが、文字通り、最悪の場合に死に至るという事実は心得ておいたほうが良いでしょう。低用量ピルを安易に奨める産婦人科クリニック、個人輸入サイト等が後を立ちませんが、最重症型の急性肺塞栓症を起こした時に命を守ってくれません。血栓症は死に至る合併症ということをよく考えて内服の判断をしましょう。


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