2020/9/9、アルコール誘発性記憶喪失、アルコール総摂取量と認知症リスクの関係を調べた研究「Association of Alcohol-Induced Loss of Consciousness and Overall Alcohol Consumption With Risk for Dementia」の要旨をまとめました。認知症のリスク因子としてのアルコール摂取のエビデンスは主に総摂取量に基づいています。アルコール誘発性記憶喪失(alcohol-induced loss of consciousness)の役割は十分にわかっていませんでした。現在飲酒集団を対象に、アルコール総摂取量、アルコール誘発性記憶喪失と将来の認知症リスクとの関係を明らかにするために、イギリス、フランス、スウェーデン、フィンランドのIPDコンソーシアム、7つのコホート研究、1986年から2012年まで、18歳から77歳まで、アルコール消費、認知症の診断を受けていない131415例を対象にしました。中央値14.4年の追跡期間中、認知症の評価を行いました。データ解析を2017年から2020年まで行いました。ベースライン時点で、自己申告式のアルコール総摂取量、アルコール摂取による意識喪失を評価しました。2つの閾値、イギリス基準で週14単位以上のアルコール摂取、週21単位以上のアルコール摂取を、重度のアルコール総摂取量と定義しました。認知症、アルコール関連障害は、2016年時点で電子カルテ記録から抽出しました。結果、131415例、中央値年齢43.0歳、女性80344例(61.1%)、1081例(0.8%)が認知症を発症しました。潜在的な交絡因子の調整後、アルコール摂取が週14単位以上の群は、週1から14単位未満の群と比べて、ハザード比1.16(95% CI, 0.98-1.37)、週21単位以上の群は週1から21単位未満の群と比べて、ハザード比1.22(95% CI, 1.01-1.48)でした。意識喪失のデータがある96591例のうち、10004例(10.4%)は過去12ヶ月以内のアルコール摂取を原因とした意識喪失の記録がありました。意識喪失と認知症の関連は、男性(HR, 2.86; 95% CI, 1.77-4.63)、女性(HR, 2.09; 95% CI, 1.34-3.25)、最初の10年間の追跡期間(HR, 2.72; 95% CI, 1.78-4.15)、10年以降(HR, 1.86; 95% CI, 1.16-2.99)、65歳未満の早期発症(HR, 2.21; 95% CI, 1.46-3.34)、65歳以降の発症(HR, 2.25; 95% CI, 1.38-3.66)と関連を認めました。アルツハイマー病(HR, 1.98; 95% CI, 1.28-3.07)、動脈硬化性心血管疾患の特徴を持つ認知症(HR, 4.18; 95% CI, 1.86-9.37)と関連を認めました。認知症との関連は他のアルコール関連疾患14項目とは関連を認めませんでした。週1から14単位の中程度の飲酒で意識喪失のない群を対照群とした際に、意識喪失の既往のある群は、週あたりのアルコール摂取量が中程度(HR, 2.19; 95% CI, 1.42-3.37)、重度(HR, 2.36; 95% CI, 1.57-3.54)の群の認知症のハザード比は2倍以上に上昇を認めました。本研究から、アルコール誘発性意識喪失は、アルコール総摂取量とは独立して、認知症リスクの上昇と関連があることを示唆しています。詳しくは論文をご覧ください。
https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2770285
アルコールによる記憶喪失(alcohol-induced loss of consciousness)は飲酒総量と独立した認知症のリスク因子であったというヨーロッパからの報告です。やっぱりそうですよね、という感想ですが、本当に脳にダメージが加わっているということでしょう。飲み過ぎには気を付けようと思います。
2020/9/9、アルコール誘発性記憶喪失、アルコール総摂取量と認知症リスクの関係を調べた研究「Association of Alcohol-Induced Loss of Consciousness and Overall Alcohol Consumption With Risk for Dementia」の要旨をまとめました。