2020/9/1、脂質低下による心血管疾患の一次予防を早期に開始した場合に期待される30年ベネフィットを比較した研究「The Expected 30-Year Benefits of Early Versus Delayed Primary Prevention of Cardiovascular Disease by Lipid Lowering」の要旨をまとめました。動脈硬化性心血管疾患の予防のための脂質低下の推奨は原則としては推算の10年リスクに基づいて行います。若年成人における脂質低下の至適な開始時期を、期待される30年ベネフィットに基づいて決定するために、2009年から2016年、30歳から59歳、「National Health and Nutrition Examination Survey」のデータから、アメリカの最新のガイドラインにおいては脂質低下療法の推奨の基準ではない3148例を解析しました。年齢、開始年齢、non-HDLコレステロール値、30年間における動脈硬化性心血管疾患の予測発生率、脂質低下の絶対的影響、相対的影響を算出しました。期待リスク減少モデルについて、スタチン試験で観察された短期効果に基づいたモデルA、メンデルのランダム化研究に基づいた長期ベネフィットモデルBのモデル2つを評価しました。結果、両方のモデルにて、30年の予測動脈硬化性心血管疾患リスクの減少の可能性は、年齢が上がるほど、non-HDLコレステロール値が高いほど強く関連していました。non-HDLコレステロール値160mg/dL異常で、40歳から49歳、脂質低下の治療開始を直ちに行った場合、治療期間30年間とした場合、期待される30年リスクの減少の算出は、11.6%(model A; absolute risk reduction [ARR], 5.5%)、6.5%(model B; ARR 10.6%)でした。脂質低下の治療開始を10年間遅らせること、治療期間20年間とした場合、残存30年リスクは、12.7%(A; ARR 4.4)、9.9%(B; ARR 7.2%)、治療開始を20年間遅らせること、治療期間10年間とした場合、残存30年リスクは、14.6%(A; ARR 2.6%)、13.9%(B; ARR 3.2%)でした。治療開始を遅らせることの絶対リスク減少の軌跡は、年齢、HDLコレステロール値の影響を受けました。40代から50代で、non-HDLコレステロール値160mg/dL以上の場合、強力の脂質低下を開始することで期待される動脈硬化性心血管疾患の30年リスク減少を達成可能です。多くの場合、脂質低下治療をいつ開始すべきかという質問は、脂質低下治療を行うかどうかよりも重要である可能性があると論文ではまとめています。
https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/CIRCULATIONAHA.120.045851
脂質低下治療をいつ開始するのが良いかという疑問に対して、脂質低下療法を直ちに開始した場合、10年後に開始した場合、20年後に開始した場合、開始しなかった場合とで動脈硬化性心血管疾患の30年間リスクを算出した結果、11.6%、12.7%、14.6%、17.1%となったという結果です。いつ開始するのかが良いかではなく、直ちに開始するのが一番良いという報告です。
2020/9/1、脂質低下による心血管疾患の一次予防を早期に開始した場合に期待される30年ベネフィットを比較した研究「The Expected 30-Year Benefits of Early Versus Delayed Primary Prevention of Cardiovascular Disease by Lipid Lowering」の要旨をまとめました。