2022/4/1、「リフィル処方箋」が日本で導入されました。

2022/4/1、「リフィル処方箋」が日本で導入されました。結論から言うと、お茶の水循環器内科の方針としては、もともと病状安定しているかかりつけ患者さんには処方日数の上限の90日処方を心がけているため大きな影響はありません。
以下、個人的意見も含めて、詳しく説明すると、医療業界の2年に1度の診療報酬改定で、以前から注目されていたリフィル処方箋が日本で導入されました。リフィル処方箋とは1枚の処方箋で複数回、再使用(リフィル:Refill)が可能な処方箋です。通常の処方箋は1回限り有効で、再利用無効ですが、リフィル処方箋はリフィル可能な回数、今回の改定では最大3回と定められたため、2回または3回を医師が記載し、その回数だけ薬局にて使用が可能になりました。リフィル処方箋の2回目、3回目の調剤の際の病状把握は医師ではなく、かかりつけの薬剤師が行うことと今回定められました。
今回のリフィル処方箋の患者さんにとってのメリットは、具体的には、今まで30日に1回通院で、30日処方の処方箋を受け取っている方にとっては、今後、3回リフィル可能なリフィル処方箋の発行を医師が認めた場合、90日に1回の通院、残りの2回は薬局にてリフィル処方箋を提示、調剤という場合が考えられます。精神薬等のもともと30日制限等の処方日数制限がある薬は30日を超えるリフィル処方箋の発行は認められていないためこの限りではありません。国にとっては、病状が変わらないで処方箋をもらうだけの実質的に「処方箋発行外来」と化してしまっている場合には、その再診料分の医療費削減効果が狙いと言えるでしょう。開業医にとっては、今まで取れていた再診料分の医業収入が減ってしまうため、リフィル処方箋を積極的に発行したがる医師は少ないかも知れません。
ちなみに、処方日数上限90日と書いて来ましたが、実は処方日数の上限について明文化された法的な定めはありません。ただ、現実的に、ほとんどの審査支払機関、保険者において、90日を超える処方に対する保険給付が認められていない現状があります。地域、医療機関、医師によっては特別に99日、100日、120日等の処方箋が通ることがあるようですが例外的で、保険診療の処方箋の日数の上限は原則90日というのが現実です。
30日処方3回のリフィル処方箋は、90日処方1回の処方箋と実質的に同等であり、であれば、90日処方の処方箋は薬局における調剤料が1回分で済むのに対し、30日処方3回のリフィル処方箋は薬局において調剤料が3回分の発生してしまい、むしろ医療費は増えてしまっています。なので、実質的に90日処方を発行している医療機関、患者さんにとって、現時点においてリフィル処方箋のメリットはないばかりか、今まで通り通常の処方箋の90日分1回処方のほうがお得ということになります。
しかしながら、90日処方1回のほうがお得というのは、処方日数の上限が実質的に90日であるという制約に由来しており、審査支払機関、保険者次第です。具体的には、審査支払機関、保険者が、90日を超えた処方、合計180日分の処方、合計270日分の処方等への保険給付を認めるということが起こるのであれば、近未来的には、60日3回、90日3回のリフィル処方箋の発行が現実的になって来ます。長期のリフィル処方箋の発行の場合の病状把握はかかりつけの薬剤師が行うことと定められているため、かかりつけの薬剤師の存在の重要性が増すことになります。
180日、270日も処方を出して大丈夫かと心配されるかも知れませんが、実は病気の中には何年も年単位で処方が変わらない、病状確認、採血も年1回程度で必要十分という例はあります。病状理解が十分であるという条件付きですが、同じ薬だけ年単位で継続出来れば良いという病気もあります。全ての病気が一律に毎月、90日に1回必ずしも通院が必要である訳ではありません。個人的には、むしろ一律の通院の必要性が、通院コスト、治療継続中断、治療継続モチベーションに負の影響を及ぼしているデメリットにも目を向ける必要があり、一律に日数制限を設けるのではなく、病状、病状理解、個別判断しながらケースによっては180日処方、270日処方が認められる例もあって良いと感じています。トータルで、治療メリットと治療継続メリットの最大化を狙っていくことが大切ではないかというのが個人的な意見です。ですので、近未来的にはリフィル処方箋の活用には賛成です。極論を言えば、今まで医学的な根拠なく患者さんに30日に1回、14日に1回の通院を強制させて経営がなりたっていたような開業医はなくいなれば良いと思っています。また、開業医がリフィル処方箋を有効活用したいと仮に考えた場合には、次に医療費を減らしたいはずの審査支払機関、保険者が逆にリフィル処方箋のポテンシャルを制限するストッパーとなってしまっているという矛盾も興味深いポイントです。現時点ではいまいち活躍が見えないリフィル処方箋ですが、近未来的には破壊的なゲームチェンジャーのポテンシャルを秘めています。
以上をまとめますと、現時点、処方日数上限が90日のうちはリフィル処方箋のメリットは希薄、近未来的に180日、270日となるとリフィル処方箋のメリットは破壊的なものになる、というのがお茶の水循環器内科の考え方で、それを決定付けるのは処方日数上限であり、審査支払機関、保険者マターであるというのがポイントです。今後も大きな変化があれば雑感をまとめます。

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