米国心臓協会(American Heart Association: AHA)から「コレステロール管理ガイドライン2018」(2018 Guideline on the Management of Blood Cholesterol)が発表されました。先週シカゴで開催された米国心臓協会学術集会にて、コレステロール管理ガイドライン2018が発表されました。2013年から5年ぶりの改訂で、コレステロール管理を通じて動脈硬化性心血管疾患(Atherosclerotic Cardiovascular Disease: ASCVD)のリスク低減を目的として、10個のテイクホームメッセージが明確化されました。ざっと日本語訳してみたところ、具体的には、
1、生涯において心血管疾患を減少させる生活習慣を強調すべきであること
2、動脈硬化性心血管疾患は、動脈硬化性心血管疾患リスク低減のために、最大耐用量のスタチンを用いてLDLコレステロールを厳格に下げること
3、動脈硬化性心血管疾患の非常にハイリスクの場合は、スタチンに加えて他の脂質低下薬の併用を考慮し、LDLコレステロール70未満を目指すこと
4、治療前のLDLコレステロール190以上の重症な高コレステロール値の場合には、動脈硬化性心血管疾患の10年リスクを計算することなく、高用量のスタチンを開始すること
5、40歳から75歳で糖尿病がありLDLコレステロール70以上の場合は、動脈硬化性心血管疾患の10年リスクを計算することなく、中容量のスタチンを開始すること
6、40歳から75歳で動脈硬化性心血管疾患を起こしていない場合は、動脈硬化性心血管疾患の10年リスクを計算し、スタチンの開始の前に治療方針について医療者と患者でよく話し合うこと
7、40歳から75歳で糖尿病がなくLDLコレステロール70以上の場合、動脈硬化性心血管疾患の10年リスクを計算し、7.5%以上である場合、中容量のスタチンの開始を考慮すること
8、40歳から75歳で糖尿病がなくLDLコレステロール70以上の場合、動脈硬化性心血管疾患の10年リスクを計算し、5%-19.9%である場合、リスク悪化因子について介入を行うこと
9、40歳から75歳で糖尿病がなくLDLコレステロール70以上190未満の場合、動脈硬化性心血管疾患の10年リスクを計算し、7.5%-19.9%である場合、冠動脈CTにおける冠動脈石灰化(Coronary Artery Calcification: CAC)の程度によってスタチンの適応を決めること
10、スタチン開始後は4-12週間でLDLコレステロール値を測定し、スタチンの反応性、アドヒアランス、生活習慣を評価、その後は必要に応じて3-12ヶ月ごとに投与量を調節すること
詳しくは上記のフローチャートまたはガイドライン本文をご覧ください。
→https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/CIR.0000000000000625
動脈硬化性心血管疾患とは、簡単に言うと心筋梗塞と脳卒中のことです。脂質異常症と言うと、日本では、LDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪と3種類の項目がありますが、アメリカでは動脈硬化を引き起こす悪玉コレステロール、LDLコレステロールを重点的に着目して、心筋梗塞と脳卒中を防ぐために強力にリスク低減させていこうという意図が読み取れます。また、治療方針について医療者と患者でよく話し合うこと、冠動脈CTにおける冠動脈石灰化(Coronary Artery Calcification: CAC)の程度によってスタチンの適応を層別化するという項目も特徴的です。脂質異常症を指摘されていましたら放置せずに主治医まで相談ください。
【お茶の水循環器内科になりました】
【具体的な診療範囲】