2020/2/19(水)-2/21(金)、ロサンゼルスで開催された国際脳卒中会議(International Stroke Conference 2020: ISC 2020)にて内頚動脈または中大脳動脈近位部閉塞による脳卒中急性期に対して組織型プラスミノゲンアクティベーター静注後に血管内治療を行う場合と最初から血管内治療を行う場合の治療成績を比較した日本の研究「The randomized study of endovascular therapy with versus without intravenous tissue plasminogen activator in acute stroke with ICA and M1 occlusion: SKIP study」の結果が発表されました。

2020/2/19(水)-2/21(金)、ロサンゼルスで開催された国際脳卒中会議(International Stroke Conference 2020: ISC 2020)にて内頚動脈または中大脳動脈近位部閉塞による脳卒中急性期に対して組織型プラスミノゲンアクティベーター静注後に血管内治療を行う場合と最初から血管内治療を行う場合の治療成績を比較した日本の研究「The randomized study of endovascular therapy with versus without intravenous tissue plasminogen activator in acute stroke with ICA and M1 occlusion: SKIP study」の結果が発表されました。内頚動脈や中大脳動脈近位部などの脳主幹動脈閉塞に対して、tPA静注後に血管内治療を行うことが現時点では推奨されていますが、tPAを投与しないで血管内治療を行う選択肢について、日本の「SKIP study」の研究グループは前向きランダム化比較試験を行いました。発症4.5時間以内、CTまたはMRIにて内頸動脈または中大脳動脈近位部(M1)の閉塞を認めた204例を対象に、tPAを投与せずに血栓回収療法を行う群101例(単独群)、tPAを投与した後に血栓回収療法を行う群103例(併用群)に分けました。結果、有効性の評価項目として90日後のmodified Rankin Scale 0-2の割合は、併用群59例(57.3%)、単独群60例(59.4%)と同等(OR 1.09 95%CI 0.63-1.90)でした。しかし、試験デザインとして非劣性の基準(95%CIが0.74を上回ること)を満たさず、非劣性の証明(非劣性のP=0.18)には至りませんでした。安全性の評価項目として36時間以内の頭蓋内出血は、併用群52例(50.5%)、単独群34例(33.7%)と、単独群で有意に減少(HR 0.50 95%CI 0.28-0.88 P=0.02)を認めました。90日後の死亡は、併用群9例(8.7%)、単独群8例(7.9%)で同等でした。詳しくは下記ページをご覧ください。
https://journals.sagepub.com/doi/abs/10.1177/1747493019840932
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/t342/202003/564425.html
内頚動脈や中大脳動脈近位部の閉塞は血栓症が大きいためか、血栓溶解療法による再開通率が低いことが経験的に知られています。血栓溶解療法によるt-PAの投与は一定の出血リスクの増加をもたらすことから、t-PA投与なしで血栓回収療法を行う選択肢が模索されていました。今回、非劣性の基準を満たせなかったということですが試験デザインの問題であり、実際には出血リスクが50%低下し、有効性は同等であるという研究結果でした。今後はt-PA投与をスキップしていきなり血管内治療という選択肢も十分にありえるのではないかと感じました。

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