2020/3/23(月)、67万6000例のバイオバンクの遺伝子データから予測される多遺伝子リスクスコアと寿命との関係を調べた研究「Trans-biobank analysis with 676,000 individuals elucidates the association of polygenic risk scores of complex traits with human lifespan」の結果をまとめました。多遺伝子リスクスコア(polygenic risk scores: PRSs)を用いて先天的な健康リスクによる予測を臨床応用する際に、修正可能な危険因子の優先順位付けを明らかにするために、遺伝子情報と寿命の関係を、日本、イギリス、フィンランドの3つのバイオバンク協働で合計675898例(日本179066例、イギリス361194例、フィンランド135638例)のデータを解析しました。観察研究では因果関係を厳密に判定するのが困難なのに対して、多遺伝子リスクスコアでは寿命に影響を及ぼすバイオマーカーの特定に有用です。結果、収縮期血圧が高いこと(high systolic blood pressure)は人種横断的に、寿命が短いこと(HR 1.03 95%CI 1.02–1.04 Pmeta = 3.9 × 10−13)と関連していました。親の寿命(1.06 95%CI 1.06–1.07 P = 2.0 × 10−86)、肥満(Pheterogeneity = 9.5 × 10−8 for BMI)も寿命が短いことに関連していました。遺伝子型と表現型の関連性を超えて、今回のバイオバンクの研究は、公衆衛生において医学的介入の目標の危険因子の優先順位付けに新しい知見をもたらすと論文ではまとめています。詳しくは論文をご覧ください。
→https://www.nature.com/articles/s41591-020-0785-8
日本医療研究開発機構のページにもプレスリリースが出ています。
→https://www.amed.go.jp/news/release_20200324.html
血圧と肥満が寿命に関係するという結論は特に目新しいものではありませんが、既存の観察研究では相関関係と因果関係の違いを厳密に判定することが困難だったのに対し、今回、多遺伝子リスクスコアという手法を導入することにより、生まれつきの遺伝情報からの予測値と実際の寿命との関連を解析することで、寿命の規定因子として因果関係の証明が出来たということです。ちなみに、血圧、肥満の次には、脂質異常が関連していました。遺伝子情報というと未知の疾病の予測が可能になったり未知の危険因子が発見されるなど過度な期待感を持たれる方がいますが、血圧、体重、脂質のコントロールが大事というありきたりな結論がより証明されたということは興味深いです。塩分を摂り過ぎず、脂質を摂り過ぎず、よく運動して減量しろということですね。
2020/3/23(月)、67万6000例のバイオバンクの遺伝子データから予測される多遺伝子リスクスコアと寿命との関係を調べた研究「Trans-biobank analysis with 676,000 individuals elucidates the association of polygenic risk scores of complex traits with human lifespan」の結果をまとめました。