2020/3/28(土)、糖尿病と心血管疾患の合併例における抗血小板療法と抗凝固療法併用の役割について調べた研究「The Role of Combination Antiplatelet and Anticoagulation Therapy in Diabetes and Cardiovascular Disease: Insights from the COMPASS Trial」の結果をまとめました。

2020/3/28(土)、糖尿病と心血管疾患の合併例における抗血小板療法と抗凝固療法併用の役割について調べた研究「The Role of Combination Antiplatelet and Anticoagulation Therapy in Diabetes and Cardiovascular Disease: Insights from the COMPASS Trial」の結果をまとめました。冠動脈疾患、末梢動脈疾患はしばしば糖尿病に合併し、将来の血管イベントのハイリスクです。「COMPASS」試験では、リバーロキサバン2.5mg 2Tをアスピリン100mgに加えた群とアスピリン群で、糖尿病の有無で解析しました。有効性の一次エンドポイントは心血管死、心筋梗塞、脳卒中の複合で、二次エンドポイントは全死亡、全主要血管イベント(心血管死、心筋梗塞、脳卒中、下肢切断を含む主要四肢イベント)、安全性の一次エンドポイントは国際血栓止血学会(International Society on Thrombosis and Haemostasis: ISTH)の基準による大出血と設定しました。結果、 糖尿病あり10341例、糖尿病なし17054例で、リバーロキサバンとアスピリン群9152例、アスピリン群9126例、糖尿病あり群6922例、糖尿病なし群11356例、一次エンドポイント(HR 0.74 p=0.002 and HR 0.77 p=0.005)、全死亡(HR 0.81 p=0.05 and HR 0.84 p=0.09)において同様の傾向を認めました。絶対リスク低下の規模は糖尿病ありと糖尿病なしで、一次エンドポイント(2.3% vs 1.4%)、全死亡(1.9% vs 0.6%)、主要血管イベント(2.7% vs 1.7%)を認めました。出血のハザード比は、糖尿病ありと糖尿病なしで同様で、リバーロキサバンのネットベネフィットは好ましい(2.7% vs 1.0% )傾向にありました。安定した動脈硬化症において、アスピリンとリバーロキサバンの併用は糖尿病の有無に関わらず、冠動脈、脳血管、末梢血管エンドポイントにおいてベネフィットを認めました。ベースラインのリスクの高さにも関わらず、糖尿病においても絶対ベネフィットを認めました。詳しくは論文をご覧ください。
https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/CIRCULATIONAHA.120.046448
糖尿病の有無と、リバーロキサバン併用かアスピリン単独か、4群の比較なので、少し訳しづらいところがありましたが、要するに糖尿病の有無に関わらず、リバーロキサバンとアスピリンの併用は心血管疾患のリスク減少に有効であるという研究結果です。リバーロキサバンは抗凝固薬であり、抗血小板薬ではないのですが、どうして心筋梗塞がこんなに減るのかは「COMPASS」試験の驚くべきところです。「動脈系血栓性には抗血小板薬」「静脈系、血流鬱滞による血栓には抗凝固薬」とは単純化された教科書的な覚え方で、動脈、静脈にかかわらず、実際には血栓形成の初期段階には血小板、その後の血栓成長には凝固系が関与しており、体内の血栓は血小板とフィブリンの混合血栓であると、解説されています。
https://www.ebm-library.jp/att/trial/detail/62539.html
血小板、凝固も奥が深いですね。


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