2020/3/17(火)、経皮的冠動脈形成術後リバーロキサバンとアスピリンの併用とアスピリン単独を比較した研究「Rivaroxaban Plus Aspirin Versus Aspirin Alone in Patients with Prior Percutaneous Coronary Intervention: COMPASS-PCI」の結果をまとめました。

2020/3/17(火)、経皮的冠動脈形成術後リバーロキサバンとアスピリンの併用とアスピリン単独を比較した研究「Rivaroxaban Plus Aspirin Versus Aspirin Alone in Patients with Prior Percutaneous Coronary Intervention: COMPASS-PCI」の結果をまとめました。「COMPASS」(Cardiovascular Outcomes for People using Anticoagulation Strategies)試験では、慢性冠症候群、末梢動脈疾患において、リバーロキサバン2.5mg 2Tとアスピリン100mg 1Tの二系統阻害(dual pathway inhibition: DPI)とアスピリン100mg 1T単独で、心血管死、心筋梗塞、脳卒中、死亡率、主要有害心血管事象(major adverse cardiovascular event: MACE)が減少するかどうかを評価しました。経皮的冠動脈形成術の既往がある場合はどうかを検討するために、慢性冠症候群で、既存の経皮的冠動脈形成術がある群とない群で、リバーロキサバンとアスピリンの併用とアスピリン単独群で差があるか「COMPASS」試験のサブグループ解析を行いました。「COMPASS」試験の参加者27395例のうち慢性冠症候群16 560例を対象に、抗凝固薬抗血小板薬併用群、アスピリン群に分けました。9862例(59.6%)は経皮的冠動脈形成術の既往があり(平均年齢68.2歳、女性19.4%、糖尿病35.7%、心筋梗塞の既往74.8%、多枝病変38.9%)、経皮的冠動脈形成術後の平均期間は5.4年(SD 4.4)で、1.98年(SD 0.72)追跡しました。結果、経皮的冠動脈形成術の既往に関係なく、抗凝固薬抗血小板薬併用はアスピリン単独と比べて、主要有害心血管事象(経皮的冠動脈形成術の既往あり群:4.0% vs 5.5% HR 0.74 95%CI 0.61–0.88、経皮的冠動脈形成術の既往なし群:4.4% versus 5.7% HR 0.76 95%CI 0.61–0.94 P-interaction=0.85)、死亡率(経皮的冠動脈形成術の既往あり群:2.5% vs 3.5% HR 0.73 95%CI 0.58–0.92、経皮的冠動脈形成術の既往なし群:4.1% vs 5.0% HR 0.80 95%CI 0.64–1.00 P-interaction=0.59)の減少を認めました。大出血(経皮的冠動脈形成術あり群 3.3% vs 2.0% HR 1.72 95%C, 1.34–2.21、経皮的冠動脈形成術なし群 2.9% vs 1.8% HR 1.58 95%CI 1.15–2.17 P-interaction=0.68)は増加を認めました。抗凝固薬抗血小板薬併用は経皮的冠動脈形成術の既往の有無に関わらずに、アスピリンと比べて主要有害心血管事象を強固に抑制しました。一年以内と10年以上(P-interaction=0.65)、心筋梗塞の既往(P-interaction=0.64)との関連は認めませんでした。抗凝固薬抗血小板薬併用はアスピリン単独と比べて、経皮的冠動脈形成術の既往の有無に関わらず、大出血を増加させるものの、主要有害心血管事象、死亡率を一貫して減少させました。経皮的冠動脈形成術から1年以内においてもそれ以上においても、最終の経皮的冠動脈形成術からの期間からと関係なしに、主要有害心血管事象、死亡率減少効果は一貫していました。詳しくは論文をご覧ください。
https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/CIRCULATIONAHA.119.044598
抗凝固薬と抗血小板薬を併用し、凝固系と血小板系を二系統とも阻害することを「dual pathway inhibition」と表現しており、抗血小板薬のみと比べて出血は増えるものの、心血管事象を有意に抑制したという結果です。主要有害心血管事象は心血管死、心筋梗塞、脳卒中、死亡の複合です。凝固と血小板を別々に考えるのではなく両方が密接に関わっていると考えたほうが良さそうです。リバーロキサバンの添付文書上の効能効果は、「非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制」と「深部静脈血栓症及び肺血栓塞栓症の治療及び再発抑制」であり、現時点では冠動脈疾患自体に対する適応はありませんのでご注意ください。詳しくは主治医とご相談ください。


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