2020/3/29(日)、急性冠症候群後の末梢動脈疾患と静脈血栓塞栓症におけるリポタンパク(a)の役割とアリロクマブの効果について調べた研究「Peripheral Artery Disease and Venous Thromboembolic Events After Acute Coronary Syndrome: Role of Lipoprotein(a) and Modification by Alirocumab: Prespecified Analysis of a Randomized Clinical Trial」の結果をまとめました。

2020/3/29(日)、急性冠症候群後の末梢動脈疾患と静脈血栓塞栓症におけるリポタンパク(a)の役割とアリロクマブの効果について調べた研究「Peripheral Artery Disease and Venous Thromboembolic Events After Acute Coronary Syndrome: Role of Lipoprotein(a) and Modification by Alirocumab: Prespecified Analysis of a Randomized Clinical Trial」の結果をまとめました。急性冠症候群(acute coronary syndrome: ACS)は末梢動脈疾患(peripheral artery disease: PAD)、静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism: VTE)のリスクです。PCSK9阻害薬(Proprotein convertase subtilisin/kexin type 9 inhibitor)はリポタンパク(a)とLDLコレステロール値を減少させます。PCSK9阻害薬は急性冠症候群後の末梢動脈疾患、静脈血栓塞栓症を減少させるかどうか、リポタンパク(a)とLDLコレステロールとの関係を明らかにするために、「ODYSSEY OUTCOMES」無作為化臨床試験を実施しました。最近の急性冠症候群で高用量または最大耐量のスタチン治療を受けている18924例を対象に、PCSK9阻害薬アリロクマブ投与群とプラセボ群に無作為化に分けました。事前解析にて末梢動脈疾患(臨床的な四肢虚血、四肢再血行再建、虚血による切断)、静脈血栓塞栓症(深部静脈血栓症、肺塞栓症)を評価、LDLコレステロール、リポタンパク(a)を測定しました。結果、ベースラインのリポタンパク(a)21mg/dl、LDLコレステロール75mm/dlでした。アリロクマブ群では相対減少値の中央値はそれぞれ23.5%、70.6%、末梢動脈疾患246例、静脈血栓塞栓症92例に発生しました。プラセボ群では末梢動脈疾患のリスクはベースラインのリポタンパク(a)の25%差と有意な関連(Ptrend=0.0021)を認めましたが、LDLコレステロール(Ptrend=0.06)とは有意な関係を認めませんでした。静脈血栓塞栓症はベースラインのリポタンパク(a)の25%差と関連の傾向(Ptrend=0.06)を認めましたが、LDLコレステロール(Ptrend=0.85)とは関連を認めませんでした。アリロクマブは末梢動脈疾患事象を有意に減少(HR 0.69 95%CI 0.54-0.89 P=0.004)を認めましたが、静脈血栓塞栓症(HR 0.67 95%CI 0.44-1.01 P=0.06)は有意な減少には至りませんでした。アリロクマブによる末梢動脈疾患の減少はベースラインのリポタンパク(a)値と有意な関連(Ptrend=0.03)を認めましたが、LDLコレステロール値(Ptrend=0.50)とは有意な関連はありませんでした。アリロクマブによる4ヶ月後のリポタンパク値(a)の減少は、LDLコレステロール値には影響を及ぼしませんでしたが、静脈血栓塞栓症、静脈血栓塞栓症と末梢動脈疾患の複合と関連を認めました。急性冠症候群でスタチン治療中において、末梢動脈疾患のリスクはリポタンパク(a)値に関連し、特にリポタンパク(a)値の高値群においてアリロクマブ投与によって末梢動脈疾患のリスクは減少を認めました。静脈血栓塞栓症とリポタンパク(a)値の関係、アリロクマブによって減少するかどうかさらなる研究が必要であると論文ではまとめられています。詳しくは論文をご覧ください。
https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/CIRCULATIONAHA.120.046524
PCSK9阻害薬のアリロクマブ投与によって急性冠症候群後の末梢動脈疾患が抑制され、抑制効果はベースラインのリポタンパク(a)値と関連をしていたという報告です。リポタンパク(a)は悪玉コレステロールの一種で、LDLコレステロールと類似していますが、動脈硬化の独立した危険因子として知られています。また、線溶系因子であるプラスミノゲンとの類似性からプラスミノゲンとの競合阻害、相対的に凝固系の促進因子でもあると考えられています。リポタンパク(a)を介して脂質系と凝固系がつながっているとは奥が深いです。


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