2020/3/11(水)、COVID-19と高血圧と糖尿病の関係についての記事「Are patients with hypertension and diabetes mellitus at increased risk for COVID-19 infection?」の内容をまとめました。

2020/3/11(水)、COVID-19と高血圧と糖尿病の関係についての記事「Are patients with hypertension and diabetes mellitus at increased risk for COVID-19 infection?」の内容をまとめました。
注意:下記は論文を和訳したのみで、私個人の意見は含めていません。
COVID-19で集中治療室(intensive care unit: IUC)から死亡した32例の併存疾患(comorbidities)で多かったのは、脳血管疾患(cerebrovascular diseases: CVD)22%、糖尿病(diabetes)22%でした。他の報告、1099例のCOVID-19の確定例で、重症化した173例の併存疾患は、高血圧23.7%、糖尿病16.2%、冠動脈心疾患5.8%、脳血管疾患2.3%でした。3つ目の報告、COVID-19の入院140例では、高血圧30%、糖尿病12%でした。この3つの報告によると、COVID-19で最も頻度の高い治療薬はACE(angiotensin-converting enzyme: ACE)阻害薬でした。ヒトに病原性を持つSARS-CoV(severe acute respiratory syndrome coronavirus)とSARS-CoV-2は、アンギオテンシン変換酵素2(angiotensin-converting enzyme 2: ACE2)を介して標的細胞と結合します。ACE2は肺の上皮細胞、腸、腎臓、血管に発現していますACE2は、ACE阻害薬、アンギオテンシンIIタイプI受容体拮抗薬(angiotensin II type-I receptor blockers: ARB)で治療されている1型糖尿病、2型糖尿病で発現が高まることがわかっています。高血圧でACE阻害薬、ARBの治療している場合もACE2のアップレギュレーション(upregulation)が起こります。ACE2はチアゾリジンジオン(thiazolidinediones)、イブプロフェン(ibuprofen)によっても増加します。以上のデータからはACE2の発現は糖尿病によって増加し、ACE阻害薬、ARBの投与によってもACE2の発現は増加することを示唆しています。したがって、ACE2の発現の増加は、COVID-10の感染を促進(facilitate)してしまう可能性があります。糖尿病や高血圧でACE2刺激となる薬剤が投与されている場合にはCOVID-19の重症化や死亡率のリスクになるのではないかという仮説が出て来ました。もし仮説が本当ならば、ACE2は炎症を減少させることで、炎症性肺疾患(inflammatory lung diseases)、がん、糖尿病、高血圧の新しい治療と期待されていることと相反する可能性があります。さらに、SARS-CoV-2感染のリスク上昇の遺伝的素因(genetic predisposition)とACE2多型(polymorphism)の関係、特にアジア人における糖尿病、脳卒中、高血圧との関連を詳しく調べる必要があります。情報の要約としては、個人の感度は、ACE阻害薬、ARBの治療と、ACE2多型の関係の結果かも知れないということ、心疾患、高血圧、糖尿病でACE2増加させる薬剤を投与を受けている場合は、COVID-19感染の重症化ハイリスクの可能性があり、ACE阻害薬、ARBなどのACE2修飾(modulating)する薬剤は観察されるべき可能性があります。2020/2/28時点におけるPubMedの検索では、降圧薬のカルシウムチャネル拮抗薬(calcium channel blockers: CCB)では、ACE2の発現や活性を増加させるというエビデンスは一つも認めませんでした。適切な代替治療(suitable alternative treatment)を考慮しても良いだろうと論文ではまとめています。
https://www.thelancet.com/journals/lanres/article/PIIS2213-2600(20)30116-8/fulltext
海外におけるACE阻害薬、ARBの大混乱の発端となった3/11のLancetの記事です。上記の内容に関して和訳したのみで、私個人の意見は含めていません。憶測だけでよくここまで記事が書けるなあという印象と、格好の好物になりそうなネタなのでメディアが飛び付いたら危ないなあという感想です。この直後、NEJM(New England Journal of Medicine)、ヨーロッパ心臓病学会、アメリカ心臓病協会、全て治療継続を中断すべきではないとステートメントを一斉に発表しています。日本でも大混乱が起きないことを切に願います。詳しくは下記まとめをご覧ください。
https://ochanomizunaika.com/15224


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