2020/4/2(木)、急性冠症候群において低用量プラスグレルと標準量クロピドグレルの虚血性事象と出血性事象について比較した日本の研究「Ischemic and Bleeding Events Among Patients With Acute Coronary Syndrome Associated With Low-Dose Prasugrel vs Standard-Dose Clopidogrel Treatment」の結果をまとめました。

2020/4/2(木)、急性冠症候群において低用量プラスグレルと標準量クロピドグレルの虚血性事象と出血性事象について比較した日本の研究「Ischemic and Bleeding Events Among Patients With Acute Coronary Syndrome Associated With Low-Dose Prasugrel vs Standard-Dose Clopidogrel Treatment」の結果をまとめました。2014年時点、東アジア人は西洋人と比べて出血をしやすいと考えられていることから、日本においてプラスグレルは西洋よりも低用量が承認されています。しかしながら、リアルワールドにおいて、低用量プラスグレル治療の転帰はクリアではありません。急性冠症候群で経皮的冠動脈形成術後の短期予後と低用量プラスグレルと標準量クロピドグレルとの関係を調べるために、日本の心血管データベース、経皮的冠動脈形成術を受けた例を対象、大規模、多施設、後ろ向きコホート「Keio Interhospital Cardiovascular Studies registry」のデータを使用しました。2014年から2018年まdえ、急性冠症候群で経皮的冠動脈形成術を受けた2770例を対象に、アスピリンと、低用量プラスグレル(負荷用量20mg、維持用量3.75mg)、クロピドグレル(負荷用量300mg、維持用量75mg)の併用について比較しました。低用量プラスグレル群とクロピドグレル群でベースラインの特性の傾向スコアマッチング分析を実施しました。一次虚血性事象は院内死亡、心筋梗塞再発、虚血性脳卒中、一次出血性事象は経皮的冠動脈形成術後72時間以内の「National Cardiovascular Data Registry CathPCI Registry definition」と一致する出血合併症と定義しました。結果、2559例、平均年齢67.8歳、男性78.2%、低用量プラスグレル群1297例(50.7%)、標準量クロピドグレル群1262例(49.3%)でした。傾向スコアマッチング後、一次虚血性事象は低用量プラスグレル群と標準量クロピドグレル群で同程度(OR 1.42 95%CI 0.90-2.23)でしたが、一次出血性事象はプラスグレル群で有意に上昇(OR 2.91 95%CI 1.63-5.18)を認めました。出血性事象の上昇は高い出血性リスク(年齢75歳以上、体重60kg未満、脳卒中または一過性脳虚血発作の既往)(OR 4.08 95%CI 1.86-8.97)、女性(OR 3.84 95%CI 1.05-14.0)、ST上昇型心筋梗塞の既往(OR 2.07 95%CI 1.05-4.09)、慢性腎臓病(OR 4.78 95%CI 1.95-11.7)と関連を認めました。プラスグレルが承認されてから、低用量プラスグレルは経皮的冠動脈形成術を受ける例の80%近くに使用されています。修正された用量にも関わらず、出血性事象は低用量プラスグレル群はクロピドグレル群よりも高い結果とりましたが、両群間で虚血性事象は差を認めませんでした。この結果は、東アジア地域の治療において、P2Y12阻害薬を選択する際に、承認用量を使用する場合でさえも、出血リスク評価の重要性を示唆していると論文ではまとめています。詳しくは論文をご覧ください。
https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2763784
経皮的冠動脈形成術後の80%近く、現在はおそらく80%以上使われているプラスグレル(エフィエント)の用量に関して、アジア人の出血リスクの高さを考慮して低用量が承認されているのも関わらず、クロピドグレル(プラビックス)と比べて出血性リスクが2.91倍高いという報告です。ちなみに海外においてプラスグレルの投与量は負荷用量60mg、維持用量10mgが標準で、日本における承認用量、負荷容量20mg、維持用量3.75mgの約3倍(逆に言えば日本が海外の約1/3)です。
https://www.ebm-library.jp/att/trial/detail/62220.html
日本人向けに適した用量はさらに低用量の可能性なども考えつつ、承認用量を守りつつ、血圧コントロール等、少しでも出血リスクを減らしていかなくてはならないと感じました。また、抗血小板薬2剤併用療法の期間についてもより短くするなど個別に判断します。詳しくは主治医までご相談ください。


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