2020/4/14(火)、多領域の無症候性の動脈硬化病変の短期間の進行について調べた研究「Short-Term Progression of Multiterritorial Subclinical Atherosclerosis」の結果をまとめました。

2020/4/14(火)、多領域の無症候性の動脈硬化病変の短期間の進行について調べた研究「Short-Term Progression of Multiterritorial Subclinical Atherosclerosis」の結果をまとめました。動脈硬化の進行は心血管事象を予測しますが、複数の無症候性の動脈硬化の進行は十分にわかっていません。動脈硬化の短期間の進行を調べるために、様々な非侵襲的な画像技術を用いて、心血管リスクとの関連を調べました。「PESA」(Progression of Early Subclinical Atherosclerosis)試験の参加者3514例、平均年齢45.7±4.2歳、男性63%、2D血管超音波(2-dimensional vascular ultrasound: 2DVUS)検査を行い、腹部大動脈、頸動脈、腸骨動脈、大腿動脈のプラークナンバースコア(plaque number score)、3D血管超音波検査によって頸動脈と大腿動脈のプラーク量を評価、冠動脈石灰化スコア(coronary artery calcium score: CACS)をベースラインと2.8年後の評価しました。ロジスティクス回帰モデルにて、進行率、ベースラインの心血管リスク因子、推定10年リスクとの関係を評価しました。結果、画像検査によって、3年間で合計41.5%(2DVUS 26.4%、3DVUS 21.3%、CACS 11.5%)に動脈硬化の進行を認めました。特に、血管超音波による末梢領域に進行を多く認めました。動脈硬化の進行の全体の1/3が動脈硬化の新規発症で、CACS(2.9%)よりも、2DVUS(29.1%)、3DVUS(16.6%)で多く見付かりました。3つのモダリティ全てにおいて病変を認めた432例は、動脈硬化の有意な進行(2DVUSにて平均1プラーク、3DVUSにて平均7.6mm3、CACSにて平均21.6 Agatston units)を認めました。年齢、性別、脂質異常症、高血圧、喫煙、若年性冠動脈疾患の家族歴は進行に関連します。特に脂質異常症は最も強い修正可能な危険因子でした。疾患の進行は心血管リスクと相関しますが、低リスク群に分類される例においても36.5%には進行が認められました。複数のモダリティの複数領域のアプローチの結果、健康な中年の男女においても短期間で早期の無症候性の動脈硬化の進行を41.5%に認めました。冠動脈石灰化スコアよりも、末梢血管の2DVUS、3DVUSで高頻度に認めました。疾患の進行はほとんど全ての心血管危険因子と推定リスクと相関していました。詳しくは論文をご覧ください。
http://www.onlinejacc.org/content/75/14/1617
40代においても自覚症状はないレベルで動脈硬化は進行しているという報告です。冠動脈CT、頸動脈エコー検査はよく行いますが、腹部大動脈エコー、腸骨動脈エコー、大腿動脈エコーは特に理由がなければ検査する機会は多くありません。様々なリスク因子がありますが、最も強く関連していたのは脂質異常症とのことです。この試験では3年間でフォローしていますが、定期的に動脈硬化のチェックを行っても良いかも知れません。詳しくは主治医までご相談ください。


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