2020/4/23(木)、COVID-19と急性肺塞栓症、胸部CT血管造影、Dダイマー値との関係について調べた研究「Acute Pulmonary Embolism in COVID-19 Patients on CT Angiography and Relationship to D-Dimer Levels」の結果をまとめました。

2020/4/23(木)、COVID-19と急性肺塞栓症、胸部CT血管造影、Dダイマー値との関係について調べた研究「Acute Pulmonary Embolism in COVID-19 Patients on CT Angiography and Relationship to D-Dimer Levels」の結果をまとめました。COVID-19感染例106例中23例(30% 95CI 22-30%)に、肺CT血管造影にて急性肺塞栓症の陽性所見を認めました。COVID-19と急性肺塞栓症の関係が報告されています。COVID-19患者1008例のうち25例に肺CT血管造影を行ったところ10例が肺塞栓症の陽性所見を認めたという報告、さらにDダイマー値は独立した重症化の危険因子であるという報告がありました。三次医療機関において胸部CTを撮影した例において肺塞栓症の発生率を調べました。ストラスブール大学病院の倫理委員会はインフォームドコンセントのもと、後ろ向き研究を行いました。2020/3/1から3/31まで、フランスの2つの病院にて、SARS-CoV-2感染症で肺CT血管造影を含む胸部CT検査をした連続症例、肺塞栓症の有無を評価しました。CT血管造影では、64列、50から75mlの高濃度ヨード造影剤、ボーラス検出技術にて160から250HUのを肺動脈として検出しました。スライス厚1mm、肺塞栓症は、主肺動脈、葉、分岐、細分岐と分類しました。臨床検査、フィブリノゲン、Dダイマー値は全ての症例で記録しました。全症例は鼻咽頭スワブのPCR検査にてSARS-CoV-2を確認しました。追加で、喀痰、気管支肺胞洗浄液(bronchoalveolar lavage: BAL)検体を用いた例もありました。陽性例はCOVID-19確定例としました。PCR陰性の場合は、14年以上の経験を持つ胸部放射線科医にてCOVID-19の特徴的所見について胸部CTを読影、胸部CT所見が典型的で臨床データも矛盾しない例もCOVID-10と判断しました。2020/3/1から3/31まで、1696例が胸部CT検査を受けて、135例が肺CT血管造影を受けました。25例は腹部、骨盤等のCT検査時の肺動脈相を撮影しました。160例のうち、106例がCOVID-19と確定診断を受けました。97例はPCR検査にて、9例はCT所見にて診断されました。CT血管造影で肺塞栓症の疑いは67例でした。三次医療機関にて肺CT血管造影を行ったところ、106例中32例(30%)に急性肺塞栓症を認めました。この率は、通常の集中治療室でCOVID-19感染例ではない場合の率(1.3%)、救急外来(3-10%)と比べて高い頻度でした。Dダイマー値のち閾値を2660μg/Lとしたところ、胸部CTで肺塞栓症を認めた全ての例を検出出来ました。これは集中治療室意外の例で肺塞栓症を除外するためのDダイマーの基準として報告されている、2400、900よりも高い値でした。Dダイマー高値は血液凝固の活性化と関連をしており、COVID-19による全身性の炎症反応症候群、またはSARS-CoV-2による直接的な影響を反映している可能性があります。単施設の後ろ向き研究ではありますが、COVID-19感染と肺塞栓症の関係の可能性についてのこの結果は、警戒すべき合併症として注意を喚起するものになるかも知れないと論文ではまとめています。詳しくは論文をご覧ください。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/32324102
COVID-19感染症の30%に肺CT血管造影で急性肺血栓塞栓症の所見を認めたという報告です。通常の救急外来で肺塞栓症を認める例は3-10%程度とのことなので、かなり高い頻度ということになります。Dダイマー値を測定し、抗凝固療法の適応を考えるというのは現実的かも知れません。


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