2020/5/9、動脈硬化性疾患の二次予防に対してアスピリンとP2Y12阻害薬の系統レビュー、メタ解析「Monotherapy with a P2Y12 inhibitor or aspirin for secondary prevention in patients with established atherosclerosis: a systematic review and meta-analysis」の結果をまとめました。

2020/5/9、動脈硬化性疾患の二次予防に対してアスピリンとP2Y12阻害薬の系統レビュー、メタ解析「Monotherapy with a P2Y12 inhibitor or aspirin for secondary prevention in patients with established atherosclerosis: a systematic review and meta-analysis」の結果をまとめました。動脈硬化性疾患に対して抗血小板療法は推奨されています。二次予防に対して、アスピリンとP2Y12阻害薬を比較しました。脳血管疾患、心血管疾患、末梢動脈疾患の二次予防に対して、アスピリン、P2Y12阻害薬を比較した全ての無作為化試験の系統レビュー、メタ解析を実施しました。2019/12/18まで、PubMed、Embase、BioMedCentral、Google Scholar、Cochrane Central Register of Controlled Trialsを対象、さらに、2017年から2019年の記事、要約を検索しました。出版年、組み込み基準、除外基準、症例規模、ベースラインの動脈硬化性疾患の特徴(脳血管疾患、心血管疾患、末梢動脈疾患等)、P2Y12阻害薬の種類と投与量、アスピリンの投与量、転帰の定義、有効性の推定、追跡期間、追跡離脱率等のデータを収集しました。オッズ比、95%信頼区間を無作為効果モデルによる治療薬の選択基準に従って求めました。一次転帰は心筋梗塞と脳卒中としました。二次転帰は全死亡、血管死亡としました。結果、全体で9本の無作為化試験を同定、42108例、P2Y12阻害薬21043例、アスピリン21065例を解析しました。P2Y12阻害薬群は、アスピリン群と比べて心筋梗塞リスク(OR 0·81 [95% CI 0·66–0·99]; I 2=10·9%)の境界型の低下(borderline reduction)を認めました。脳卒中リスク(OR 0·93 [0·82–1·06]; I 2=34·5%)、全死亡(OR 0·98 [0·89–1·08]; I 2=0%)、血管死亡(OR 0·97 [0·86–1·09]; I 2=0%)に関してはP2Y12阻害薬群、アスピリン群間で差を認めませんでした。同様に、大出血(OR 0·90 [0·74–1·10]; I 2=3·9%)に関してもP2Y12阻害薬群、アスピリン群間で差を認めませんでした。心筋梗塞予防のための治療必要数(number needed to treat: NNT)はP2Y12阻害薬で244例でした。この結果はP2Y12阻害薬の種類によらずに一貫していました。アスピリン単独療法と比較して、P2Y12阻害薬単独療法は、二次予防において、心筋梗塞の減少と関連していましたが、脳卒中のリスクは同程度でした。P2Y12阻害薬単独療法のベネフィットは、臨床データベースからは、心筋梗塞の予防としては治療必要数が高く、全死亡、血管死亡については何の影響も認められませんでした。詳しくは論文をご覧ください。
https://www.thelancet.com/pdfs/journals/lancet/PIIS0140-6736(20)30315-9.pdf
動脈硬化性疾患の二次予防においてP2Y12阻害薬とアスピリンの比較です。P2Y12阻害薬のほうが、心筋梗塞の予防にやや優れるものの、治療必要数は244で、強く推奨されるほどには至らないという結果です。大出血も減少を期待していましたが、有意な差には至らなかったという結果でした。抗血小板薬の新規の開発の基本戦略としてはアスピリンの改良、改善を目指すものですが、依然としてアスピリンの有効性、安全性の強さに驚くばかりです。


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