2020/5/6、抗凝固薬治療とCOVID-19入院中の生存率の関係について調べた研究「Association of Treatment Dose Anticoagulation with In-Hospital Survival Among Hospitalized Patients with COVID-19」の結果をまとめました。
COVID-19が全世界の国へ影響しています。入院中の血栓塞栓症イベントの増加が報告されていますが、全身性の抗凝固療法（anticoagulation: AC）は以前から慣例的に使われていますが、転帰を改善するかどうかは十分にわかっていません。COVID-19と入院中の抗凝固療法の関係について大規模コホートをマウントサイナイ医科大学の治験審査委員会によって実施しました。2020/3/14から4/11まで、ニューヨーク州のマウントサイナイヘルスシステムで、COVID-19検査確定例2773例が報告されました。入院中の死亡率と全身性の抗凝固療法（経口、皮下、血管内）の効果をCox比例ハザードモデルによって評価しました。年齢、性別、人種、BMI、高血圧、心不全、心房細動、2型糖尿病等の既往、過去の抗凝固療法による入院、入院日を調整しました。入院日の違い、抗凝固療法の開始の調整、抗凝固療法期間は、挿管中の場合は時間依存変数を治療としました。COVID-19入院例2773例のうち、786例（28%）は入院中の全身性の抗凝固療法を受けていました。平均入院期間は5日間（四分位範囲 3-8日）、入院から抗凝固療法の開始までの平均は2日（四分位範囲 0-5日）、抗凝固療法の平均期間は3日間（四分位範囲 2-7日）でした。抗凝固療法を受けている群の入院中死亡率は22.5%、平均生存日数は21日間、抗凝固療法を受けていない群の入院中死亡率は22.8%、平均生存日数は14日間でした。抗凝固療法を受けている群は機械的換気を必要とする割合が有意に高い（29.8% vs 8.1%, p<0.001）結果でした。全体で、抗凝固療法群は、非抗凝固療法群と比べて、プロトロンビン時間、活性化部分トロンボプラスチン時間、乳酸デヒドロゲナーゼ、フェリチン、CRP、Dダイマー値が有意に高値でした。機械換気を必要とする例において差は認められませんでした。機械換気を必要とした395例について、抗凝固療法群では入院中死亡率は29.1%、平均生存日数は21日間、非抗凝固療法群では62.7%、平均生存日数は9日間でした。多変数比例ハザードモデルにおいて、抗凝固療法期間の長さは死亡率の低下と有意に関連（調整後HR 0.86 per day 95%CI 0.82-0.89 p<0.001）を認めました。さらに、全身性の抗凝固療法と出血イベントとの関連についても調べました。大出血は、ヘモグロビン7g/dL未満、赤血球移動、48時間以内に2単位以上の赤血球輸血、頭蓋内出血、吐血、下血、出血性医十二指腸潰瘍、大腸、直腸、肛門からの出血、血尿、眼球出血、急性出血性胃炎等の大出血の診断コードと定義しました。出血イベントは、非抗凝固療法群38例（1.9%）、抗凝固療法群24例（3%）でした。24例の抗凝固療法群の出血イベントにおいて、15例（63%）は抗凝固療法開始後に出血イベントが発生しており、9例（37%）は抗凝固療法開始前に発生しています。出血イベントは、挿管中395例中30例（7.5%）、非挿管中2378例中32例（1.35%）で、挿管中により頻度を高く認めました。観察研究のため、交絡因子、抗凝固療法関連因子、重症化基準、挿管基準の統一性のバイアス等の限界はありますが、COVID-19入院例において全身性の抗凝固療法は転帰を改善する可能性があることを示唆しています。全身性の抗凝固療法のベネフィットの可能性、出血リスクへの注意を考慮する必要性があり、個別に考慮を検討すべきです。入院中の抗凝固療法、機械換気は、重症の臨床経過に対する抗凝固療法の適応を反映している可能性があります。興味深いことに、調整後も抗凝固療法は機械換気において生存改善を認めました。アメリカにおける大規模コホートからのデータから、COVID-19入院例の管理において臨床的な示唆がありました。COVID-19入院例において全身性の抗凝固療法のベネフィットがあどうかどうか前向き無作為化試験が必要と論文ではまとめています。詳しくは論文をご覧ください。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32387623
pre-proof版ではありますが、COVID-19の転帰改善のために抗凝固療法はベネフィットがありそうだという報告です。日経メディカルにも記事があります。
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/t344/202005/565513.html
2020/5/6、抗凝固薬治療とCOVID-19入院中の生存率の関係について調べた研究の一部「Association of Treatment Dose Anticoagulation with In-Hospital Survival Among Hospitalized Patients with COVID-19」の結果をまとめました。