2020/5/10、心不全における循環血漿中ACE2濃度とレニンアンジオテンシンアルドステロン阻害薬の影響について調べた研究「Circulating plasma concentrations of angiotensin-converting enzyme 2 in men and women with heart failure and effects of renin-angiotensin-aldosterone inhibitors」の結果をまとめました。

2020/5/10、心不全における循環血漿中ACE2濃度とレニンアンジオテンシンアルドステロン阻害薬の影響について調べた研究「Circulating plasma concentrations of angiotensin-converting enzyme 2 in men and women with heart failure and effects of renin-angiotensin-aldosterone inhibitors」の結果をまとめました。SARS-CoV-2感染のパンデミックは幅広い年代に広がっていますが、特に心血管治療のある高齢の男性で重症化が多く報告されています。レニンアンギオテンシンアルドステロン系(renin–angiotensin–aldosterone system: RAAS)阻害薬との関連、アンギオテンシン変換酵素(Angiotensin-converting enzyme: ACE)2はSARS-CoV-2の受容体として機能すると報告されています。ACE2高濃度とSARS-CoV-2への脆弱性、RAAS阻害薬の影響を調べるために、心不全の男性1485例、女性537例のACE2濃度を測定するインデックスコホートと、男性1123例、女性575例の検証コホートを実施しました。平均年齢、男性69歳、女性75歳、ACE2濃度の強い予測因子としては男性であること(estimate = 0.26, P < 0.001; and 0.19, P < 0.001, respectively)でした。インデックスコホートにおいてACE阻害薬、アンギオテンシン受容体拮抗薬(angiotensin receptor blockers: ARBs)、ミネラルコルチコイド受容体阻害薬(mineralocorticoid receptor antagonists: MRAs)の使用は血漿中ACE2の独立した予測因子ではありませんでした。検証コホートにおいて、ACE阻害薬(estimate = –0.17, P = 0.002)、ARB(estimate = –0.15, P = 0.03)は血漿中ACE2低値の独立した予測因子でしたが、MRA(estimate = 0.11, P = 0.04)の使用は血漿中ACE2濃度高値の独立した予測因子でした。2つの独立した心不全コホートいんて、血漿中ACE2濃度は男性は女性と比べて高値でした。ACE阻害薬、ARBの使用と血漿中ACE2濃度高値とはいずれも関係がありませんでした。COVID-19で男性において高い死亡率を説明する可能性があります。ACE阻害薬、ARBが血漿中ACE濃度を上昇させ、COVID-19への脆弱性を増加させるという証拠は認められませんでした。詳しくは論文をご覧ください。
https://academic.oup.com/eurheartj/article/41/19/1810/5834647
ACE阻害薬、ARBとCOVID-19の死亡率との関係は否定的であるのは既存の報告と一貫していますが、ACE阻害薬、ARBを使用していたほうが血漿中ACE2濃度が低いという新しい報告です。高いほうが問題という話なので、低い分にはいいんじゃないかという結果です。


PAGETOP