2020/5/27、経皮的冠動脈形成術後の抗血小板薬2剤併用療法の中断と有害イベントとの関係について調べた研究「Bleeding Risk, Dual Antiplatelet Therapy Cessation, and Adverse Events After Percutaneous Coronary Intervention: The PARIS Registry」の結果をまとめました。

2020/5/27、経皮的冠動脈形成術後の抗血小板薬2剤併用療法の中断と有害イベントとの関係について調べた研究「Bleeding Risk, Dual Antiplatelet Therapy Cessation, and Adverse Events After Percutaneous Coronary Intervention: The PARIS Registry」の結果をまとめました。経皮的冠動脈形成術後、出血リスク、抗血小板薬2剤併用療法(dual antiplatelet therapy: DAPT)の中断と、有害イベントとの関係は十分にわかっていません。前向き国際多施設登録研究、「PARIS」(Patterns of Non-Adherence to Anti-Platelet Regimens in Stented Patients)、PARIS出血リスクスコア(PARIS bleeding risk score)を用いて出血リスクに応じて分類しました。出血リスク群において、抗血小板薬2剤併用療法の中断と転帰との関連を分析しました。抗血小板薬2剤併用療法の中断は、主治医の指示による中止(physician-guided DAPT discontinuation)、14日以内の一時的な中断、出血による中止、コンプライアンス不良によるもの、と定義しました。一次転帰は、主要有害心臓事象、心臓死、心筋梗塞、ステント血栓症の確定または疑いの複合と定義しました。全5018例のうち、出血リスクは、513例(10.2%)は高リスク、2058例(41.0%)は中程度、2447例(48.8%)は低リスク分類しました。高出血リスク(High bleeding risk: HBR)群は、高齢で、合併症の有病率が高い傾向にありました。非高出血リスク群と比べて、高出血リスク群は、虚血性イベント、出血性イベント、いずれも高い発生率でした。抗血小板薬2剤併用療法の中断の累積発生率は、高出血リスク群において多く、ほとんどは主治医の指示による中断、中止によるものでした。抗血小板薬2剤併用療法の中断は、高リスク群、中リスク群、低リスク群でそれぞれ、1年目、17.7%、10.4%、7.8%、2年目、22.0%、15.1%、12.0%で、有意差(P<0.0001)を認めました。主治医の指示による抗血小板薬2剤併用療法の中止は、高出血リスク群におても、非高出血リスク群においても、主要有害心臓事象の増加とは関連を認められませんでしたが、全てのリスク群において、抗血小板薬2剤併用療法の中断は主要有害心臓事象のリスク増加と関連を認めました。どの中断モデルにおいても、出血リスク状態と臨床転帰との相互関係は認めませんでした。高出血リスク群においても有害事象のリスクは残りました。抗血小板薬2剤併用療法の中断は、出血リスクとは関係なく、主要有害心臓事象のリスク増加と関連を認めました。主治医の指示による抗血小板薬2剤併用療法の中断は高出血リスク群かどうかに関係なく、安全と考えらられますと論文ではまとめています。詳しくは論文をご覧ください。
https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/CIRCINTERVENTIONS.119.008226
経皮的冠動脈形成術後の抗血小板薬2剤併用療法はステント留置後には必須ですが、しばしば出血リスクが問題となります。出血リスクのため、やむを得なく中止をしなくてはならないことはありますが、代償として虚血性合併症のリスクは増加してしまいます。しかし、主治医の判断による中止では心血管疾患リスクは増加しなかったとの報告です。自己判断による中止は心筋梗塞の再発の原因として非常に多いです。二次予防こそ継続が重要です。


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