2020/6/3、集中治療室における利尿薬プロトコルの有用性について調べた研究「Impact of protocolized diuresis for de-resuscitation in the intensive care unit」の結果をまとめました。

2020/6/3、集中治療室における利尿薬プロトコルの有用性について調べた研究「Impact of protocolized diuresis for de-resuscitation in the intensive care unit」の結果をまとめました。利尿薬は集中治療室においてショック後の体液量管理の補助、臨床転帰の改善に使われますが、現行のガイドラインでは利尿薬の使用に関する標準化、ガイダンスは含まれていません。集中治療室で利尿薬ベースの除水(de-resuscitation)のプロトコルの効果を評価しました。単施設のパイロット研究で、大規模大学病院の集中治療室にて実施しました。成人で、機械換気を受けており、胸部レントゲン、身体所見にて体液量過剰(volume overload)の臨床的兆候を認める場合、入院後の累積水分バランスが0ml以上を対象としました。2年間で主治医の判断で利尿薬の投与を受けた群(過去のコホート)、利尿薬プロトコルに従って治療した群(介入群)としました。結果、364例、プロトコル群91例、標準治療群273例でした。プロトコル利尿薬群でショック後72時間の累積水分バランスは有意に低下(median, IQR − 2257 (− 5676–920) mL vs 265 (− 2283–3025) mL; p < 0.0001)を認めました。院内死亡率は、介入群で過去のコホート群と比較して、有意に低下(5.5% vs 16.1%; p = 0.008)を認め、集中治療室からの離脱日数も有意(p = 0.03)に改善を認めました。換気からの離脱は統計学的に有意差はなく、高ナトリウム血症、低カリウム血症の頻度が増加しました。利尿薬の除水プロトコルはショック後72時間の水分バランスを有意に改善し、臨床転帰にベネフィットがあるだろうと論文ではまとめています。詳しくは論文をご覧ください。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32111247
入院中の利尿薬の調整は、厳密な計算式もあるのですが、実際には主治医のさじ加減で行うことも少なくなく、多過ぎれば脱水になり、少な過ぎればうっ血になるという微妙なバランス感覚が求められます。プロトコルを作ったところ、除水量が増え、死亡率が低下したという報告です。ショック後は、低血圧、脱水を恐れるあまり、利尿薬の過小投与になっていたということでしょうか。人間が熟練の経験値で行っていたことをプロトコルで置き換えていこうというアプローチは多忙な集中治療室の現場では有用ではないかと感じました。


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