2020/5/30、COVID-19とレニンアンギオテンシンアルドステロン系阻害薬について調べたスペインの研究「Use of renin-angiotensin-aldosterone system inhibitors and risk of COVID-19 requiring admission to hospital: a case-population study」の結果をまとめました。レニンアンギオテンシンアルドステロン系(renin–angiotensin–aldosterone system: RAAS)阻害薬とCOVID-19の重症化について懸念が上がっていましたが、疫学的エビデンスは十分ではありませんでした。スペイン、マドリードにて、COVID-19のアウトブレイクが発生してから症例集団研究を実施しました。2020/3/1から2020/3/24まで、マドリード、7つの病院に入院、18歳以上、PCR検査でCOVID-19の確定診断例を対象としました。参照群として、年齢、性別、地域、入院日等をマッチさせたデータを症例1例に対して10例、スペインのプライマリヘルスケアのデータベース「BIFAP」(Base de datos para la Investigación Farmacoepidemiológica en Atención Primaria)から無作為に選出しました。基礎疾患、処方薬のデータを電子カルテから抽出しました。関心転帰はCOVID-19入院としました。交絡因子の影響を最小化するために、主解析では、入院を必要とするCOVID-19とレニンアンギオテンシンアルドステロン系阻害薬の使用とその他の降圧薬の使用の関係に的を絞って解析を行いました。年齢、性別、心血管基礎疾患、危険因子調整後のオッズ比(odds ratios: ORs)、95%信頼区間(95%CIs)を、条件付きロジスティックス回帰を用いて計算しました。研究プロトコルはEUの公認後研究の電子登録「EUPAS34437」に登録されています。症例群1139例、対照群11390例を比較しました。症例群、女性444例(39.0%)、平均年齢69.1歳、年齢、性別マッチ後にも関わらず、症例群は基礎疾患として心血管疾患(OR 1·98, 95% CI 1·62–2·41)、危険因子(1·46, 1·23–1·73)を多く認めました。他の降圧薬の使用と比べて、レニンアンギオテンシンアルドステロン系阻害薬の使用は入院を必要とするCOVID-19の調整後オッズ比は0.94(95%CI 0·77–1·15)でした。アンギオテンシン変換酵素阻害薬(adjusted OR 0·80, 0·64–1·00)、アンギオテンシン受容体拮抗薬(1·10, 0·88–1·37)、いずれにおいても差を認めませんでした。性別、年齢、基礎の心血管リスクはレニンアンギオテンシンアルドステロン系阻害薬と入院が必要なCOVID-19との関係の調整後オッズ比に影響を与えませんでした。一方で、レニンアンギオテンシンアルドステロン系阻害薬の使用は糖尿病がある群において、入院を必要とするCOVID-19のリスクの減少(adjusted OR 0·53, 95% CI 0·34–0·80)を認めました。COVID-19の重症度の程度に寄らず、調整後オッズ比は同様でした。詳しくは論文をご覧ください。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32416785
レニンアンギオテンシンアルドステロン系阻害薬とCOVID-19の関係について、もう飽きたという感じもしますが、悪影響がなかったばかりか、糖尿病がある群においては入院リスクを47%減少させるかも知れないというスペインから新しい報告です。もし本当に減るのであればなぜ減るのかという疑問が浮上してしまうので、この議論にはまだ終わりがないのかも知れません。害がないことは確実に決着が着いたという理解で良いでしょう。
2020/5/30、COVID-19とレニンアンギオテンシンアルドステロン系阻害薬について調べたスペインの研究「Use of renin-angiotensin-aldosterone system inhibitors and risk of COVID-19 requiring admission to hospital: a case-population study」の結果をまとめました。