2020/6/2、冠動脈ステント再狭窄に対する薬剤被覆バルーン血管形成術と薬剤溶出性ステント留置術を比較した研究「Drug-Coated Balloon Angioplasty Versus Drug-Eluting Stent Implantation in Patients With Coronary Stent Restenosis」の結果をまとめました。

2020/6/2、冠動脈ステント再狭窄に対する薬剤被覆バルーン血管形成術と薬剤溶出性ステント留置術を比較した研究「Drug-Coated Balloon Angioplasty Versus Drug-Eluting Stent Implantation in Patients With Coronary Stent Restenosis」の結果をまとめました。冠動脈ステント内再狭窄(in-stent restenosis: ISR)は再介入が必要ですが、治療の選択として、再狭窄ステントがベアメタルステントか薬剤溶出性ステントかによって治療を変える必要があるのかは十分にわかっていません。ベアメタルステントまたは薬剤溶出性ステントのステント内再狭窄に対して、最も頻度の高い治療法として、薬剤被覆バルーン(drug-coated balloon: DCB)による血管形成術と、薬剤溶出性ステントの再留置術と2つの治療法の有効性と安全性を比較するために、「DAEDALUS」(Difference in Antirestenotic Effectiveness of Drug-Eluting Stent and Drug-Coated Balloon Angioplasty for the Occurrence of Coronary In-Stent Restenosis)では、冠動脈ステント内再狭窄の治療として、薬剤被覆バルーン血管形成術と薬剤溶出性ステント留置術を比較した10の無作為化臨床研究のデータの蓄積解析を実施しました。事前項目指定解析にて、ベアメタルステントか薬剤溶出性ステントかと治療選択によって層別化しました。有効性の主要転帰は3年以内の標的病変血行再建としました。安全性の主要転帰は3年以内の全死亡、心筋梗塞、標的病変血栓症の複合としました。一次解析はもとの試験の混合影響Coxモデルにて、二次解析は多病変、二層解析、多変量調整を行いました。結果、ベアメタルステントステント内再狭窄全710例722病変、薬剤溶出性ステントステント内再狭窄1248例1377病変を収集しました。ベアメタルステントステント内再狭窄において、有効性の主要転帰(9.2% vs. 10.2%; hazard ratio [HR]: 0.83; 95% confidence interval [CI]: 0.51 to 1.37)、安全性の主要転帰(8.7% vs. 7.5%; HR: 1.13; 95% CI: 0.65 to 1.96)と、治療間で有意差は認めず、二次解析の結果も一貫していました。薬剤溶出性ステントステント内再狭窄においては、有効性の主要転帰リスクは、薬剤被覆バルーン血管形成術は、薬剤溶出性ステント留置術と比べて、高値(20.3% vs. 13.4%; HR: 1.58; 95% CI: 1.16 to 2.13)でしたが、安全性の主要転帰リスクは数値的に低値(9.5% vs. 13.3%; HR: 0.69; 95% CI: 0.47 to 1.00)で、二次解析の結果も一貫していました。治療選択に寄らずに、血行再建リスクはベアメタルステントステント内再狭窄は薬剤溶出性ステントステント内再狭窄と比べて低値(9.7% vs. 17.0%; HR: 0.56; 95% CI: 0.42 to 0.74)、安全性はステント内再狭窄のタイプ間で有意差はありませんでした。3年間の追跡の結果、薬剤被覆バルーン血管形成術と薬剤溶出性ステントによるステント再留置術は、ベアメタルステントステント内再狭窄の治療としては有効性、安全性は同等でした。薬剤溶出性ステントステント内再狭窄の治療として、薬剤被覆バルーン血管形成術は薬剤溶出性ステント再留置術と比べて有効性は有意に低値で、安全性の主要複合転帰の有意な減少を認めませんでした。全体として、薬剤溶出性ステントステント内再狭窄はベアメタルステントステント内再狭窄と比べて、高い治療失敗の発生率、同等の安全性を認めました。詳しくは論文をご覧ください。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32466881
ステント内再狭窄の治療方針において、薬剤被覆バルーン血管形成術と薬剤溶出性ステント再留置術の2つを比較したメタ解析です。ベアメタルステントの場合はどちらの治療も同等ですが、薬剤溶出性ステントの場合には薬剤溶出性ステント再留置術のほうが良いという報告です。前回の治療が何だったかによって二回目の適切な治療が変わって来るという有用な情報です。


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