2020/7/1、糖尿病の既往歴は大腸癌の家族歴と同等に大腸癌のリスクとなるという研究「Personal History of Diabetes as Important as Family History of Colorectal Cancer for Risk of Colorectal Cancer: A Nationwide Cohort Study」の要旨をまとめました。

2020/7/1、糖尿病の既往歴は大腸癌の家族歴と同等に大腸癌のリスクとなるという研究「Personal History of Diabetes as Important as Family History of Colorectal Cancer for Risk of Colorectal Cancer: A Nationwide Cohort Study」の要旨をまとめました。糖尿病と直結腸癌(colorectal cancer: CRC)は共通のリスク因子として、生活習慣、代謝異常があります。直結腸癌リスク、特に早期発症の直結腸癌、糖尿病、直結腸癌の家族歴、糖尿病の診断年齢との関係を詳しく調べました。1964年から2015年まで、スウェーデン家族性腫瘍、外来、入院登録研究、1931年以降の出生者と家族、全12614256例、糖尿病559375例、直結腸癌162226例のデータセットを用いて、全国コホート研究を実施しました。結果、50歳以前に糖尿病と診断されていることは、リスク標準化罹患比で、50歳以前の直結腸癌のリスク1.9倍の増加(95% CI for standardized incidence ratio: 1.6-2.3)、50歳以降の直結腸癌のリスク1.3倍の増加(1.2-1.4)を認めました。直結腸癌の家族歴があり、50歳以前に糖尿病と診断されていることは、50歳以前の直結腸癌のリスク6.9倍(4.1-12)、50歳以降の直結腸癌のリスク1.9倍(1.4-2.5)と関連していました。糖尿病がある場合の50歳以前の直結腸癌のリスク(0.4%, 95% CI: 0.3%-0.4%)、直結腸癌の家族歴(0.5%, 0.5%-0.5%)と同等で、一般人口(0.2%, 0.2%-0.2%)の2倍のリスクに相当しました。糖尿病、癌の家族歴の大規模コホート研究の結果、糖尿病は直結腸癌のリスク上昇因子であり、その影響の程度は直結腸癌の家族歴に同程度に相当しました。糖尿病、直結腸癌の家族歴は直結腸癌のリスク上昇との関係は、特に若年者において顕著でした。これらの所見から、糖尿病、特に2型糖尿病において、一般人口よりも早期に直結腸癌のスクリーニングを行うことの害、便益、費用対効果についてさらなる研究の必要性があるだろうと論文ではまとめています。https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32618661
糖尿病の存在は大腸癌のリスク因子であることは糖尿病診療においては経験的に認識されていますが、どの程度のリスク因子であるか定量的に評価したところ、大腸癌の家族歴と同程度のリスク因子に相当するという報告です。日本では大腸癌検診の適応について明確な決まりではありませんが、40歳以上を一つの目安として大腸癌検診を受けましょうということになっていますので、特に糖尿病がある方は受け忘れのないように注意しましょう。また、糖尿病が理由なく悪化した場合に大腸癌の精査を行うという目安も糖尿病診療においては経験的に正しいことが多いです。主治医から大腸癌検診を奨められた時には自己判断で放置しないようにしましょう。
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/digestive/202008/566628.html


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