2020/7/21、急性心筋梗塞、潜在性甲状腺機能低下症においてレボチロキシンの左室駆出率へ与える影響を調べた研究「Effect of Levothyroxine on Left Ventricular Ejection Fraction in Patients With Subclinical Hypothyroidism and Acute Myocardial Infarction: A Randomized Clinical Trial」の要旨をまとめました。

2020/7/21、潜在性甲状腺機能低下症、急性心筋梗塞においてレボチロキシンの左室駆出率へ与える影響を調べた研究「Effect of Levothyroxine on Left Ventricular Ejection Fraction in Patients With Subclinical Hypothyroidism and Acute Myocardial Infarction: A Randomized Clinical Trial」の要旨をまとめました。甲状腺ホルモンは心筋収縮の調整に重要な役割を果たしています。潜在性甲状腺機能低下症(Subclinical hypothyroidism)で、急性心筋梗塞を起こした場合、予後不良と関連しています。潜在性甲状腺機能低下症で急性心筋梗塞を起こした場合、レボチロキシン治療による左室駆出率への影響を調べるために、イギリス、6病院にて二重盲検無作為化臨床試験を実施しました。2015年から2016年まで、ST上昇型心筋梗塞、非ST上昇型心筋梗塞、急性心筋梗塞、2017年まで追跡しました。レボチロキシン群46例、血清サイロトロピン値、0.4mU/Lから2.5mU/Lを目標に、レボチロキシン25μgから開始、プラセボ群49例、カプセル型で1日1回内服、52週間追跡しました。主要転帰は52週間後時点の左室駆出率で、心臓MRIにて評価、年齢、性別、急性心筋梗塞のタイプ、冠動脈病変の部位、開始時の左室駆出率にて補正しました。副次転帰は左室重量、梗塞サイズ、有害事象、自己問診の健康状態の転帰、健康関連生活の質、抑うつ状態としました。結果、無作為化95例、年齢中央値は63.5歳、72例(76.6%)男性、65例(69.1%)はST上昇型心筋梗塞でした。血清サイロトロピン値の中央値は5.7mU/L(interquartile range, 4.8-7.3 mU/L)、血清遊離型サイロキシン値の中央値は1.14ng/dLでした。85例(89.5)で52週間後の主要転帰の測定が入手可能でした。左室駆出率の平均値は、レボチロキシン群で開始時51.3%、52週間後時点53.8%、プラセボ群で開始時54.0%、52週間後時点56.1%、有意差(adjusted difference in groups, 0.76% [95% CI, -0.93% to 2.46%]; P = .37)を認めませんでした。副次転帰6項目において、レボチロキシン群とプラセボ群との間に有意差を認めませんでした。心血管有害事象は、レボチロキシン群15例(33.3%)、プラセボ群18例(36.7%)発生しました。潜在性甲状腺機能低下症、急性心筋梗塞にて、レボチロキシン治療はプラセボと比較して、52週間後時点の左室駆出率を有意に改善しませんでした。今回の結果から急性心筋梗塞において、潜在性甲状腺機能低下症を治療することを支持しませんでした。詳しくは論文をご覧ください。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32692386
潜在性甲状腺機能低下症、甲状腺機能低下症は脂質異常症を来して間接的に、心拍数調整作用、左室収縮力に作用し、直接的に心機能に影響を与えますが、急性心筋梗塞後1年間に治療することは心機能に提供を与えなかったとのことです。


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