2020/8/20、ホモ型家族性高コレステロール血症に対するエビナクマブの効果について調べた研究「Evinacumab for Homozygous Familial Hypercholesterolemia」の要旨をまとめました。

2020/8/20、ホモ型家族性高コレステロール血症に対するエビナクマブの効果について調べた研究「Evinacumab for Homozygous Familial Hypercholesterolemia」の要旨をまとめました。ホモ型家族性高コレステロール血症は顕著なLDLコレステロール値の上昇、心血管疾患のハイリスク群です。原因は遺伝子変異で、LDL受容体活性の欠損(null–null)、不全(non-null)の結果です。機能喪失型遺伝子変異は、動脈硬化性の心血管疾患に対して保護的に作用、低脂血症と関連するアンジオポエチン様3(angiopoietin-like 3: ANGPTL3)をコードした遺伝子です。エビナクマブ(Evinacumab)は、ANGPTL3に対するモノクローナル抗体で、ホモ型家族性高コレステロール血症に効果的な可能性があります。二重盲検プラセボ対照第III相試験では、ホモ型家族性高コレステロール血症65例、既存の脂質降下療法に加え、エビナクマブの静脈投与(4週間ごとに体重1kgあたり15mgの用量を投与)、プラセボ群と無作為に割り振りました。主要転帰は開始時から24週間後時点のLDLコレステロール値の変化率としました。結果、開始時のLDLコレステロール値の平均値は、最大量の脂質低下療法を受けているにも関わらず、両群とも255.1mg/dLでした。24週間後、エビナクマブ群のLDLコレステロール値の開始時からの相対低下率は47.1%、プラセボ群では1.9%増加で、両群間の差は-49.0%で有意差(95% confidence interval [CI], –65.0 to –33.1; P<0.001)を認めました。両群間のLDLコレステロール値の絶対差は、-132.1mg/dLで有意差(95% CI, –175.3 to –88.9; P<0.001)を認めました。LDLコレステロール値はエビナクマブ群、プラセボ群、完全喪失型変異(null–null variants)群(–43.4% vs. +16.2%)、機能不全型変異(non-null variants)群(–49.1% vs. –3.8%)でした。有害事象は両群間で同様でした。ホモ型家族性高コレステロール血症で最大用量の脂質低下療法を受けている例において、開始時からのLDLコレステロール値の変化は、エビナクマブ群で減少、プラセボ群でやや上昇、結果として24週間後時点で両群間に49.0%の差を認めました。詳しくは論文をご覧ください。
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2004215
開発中の新薬で、ANGPTL3阻害薬の第III相試験の論文です。スタチン等を最大限まで使用してもLDLコレステロールが250以上ある場合であえも、LDLコレステロールを強力に下げたとの報告です。どんどん新薬が出ますね。家族性高コレステロール血症ではない場合、スタチンを使えば確実に下るので、他の新薬の出番はあまりないのが実際のところです。


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