2020/8/4、心筋梗塞後の非ステロイド性消炎薬と心血管リスク、出血リスクの関係を調べた研究「Cardiovascular and Bleeding Risks Associated With Nonsteroidal Anti-Inflammatory Drugs After Myocardial Infarction」の要旨をまとめました。心筋梗塞後、非ステロイド性消炎薬(nonsteroidal anti-inflammatory drug: NSAID)治療に関連した有害臨床事象のリスクは十分にわっていませんでした。心筋梗塞の既往がある場合、抗血栓療法、非ステロイド性消炎薬のサブタイプと、心血管事象、出血事象リスクとの関係を調べるために、2009年から2013年まで、韓国の健康保険審査評価サービスのデータベースから全国コホート研究を実施しました。処方された抗血栓薬に基づいて群に分けました。主要、副次転機は血栓塞栓性心血管事象、臨床関連出血事象としました。有害臨床事象のリスクは現在のNSAID治療、NSAIDのサブタイプごとに評価しました。結果、全体108232例、平均年齢64.2歳、男性72.1%、平均追跡期間2.3年、心筋梗塞と診断されている例を組み込みました。NSAID治療は、NSAID治療のない群と比べて、心血管事象(hazard ratio [HR]: 6.96; 95% confidence interval [CI]: 6.24 to 6.77; p < 0.001)、出血事象(HR: 4.08; 95% CI: 3.51 to 4.73; p < 0.001)を有意に増加と関連を認めました。NSAIDのサブタイプとして、心血管事象、出血事象のリスクが最も低かったのは、セレコキシブ(HR: 4.65; 95% CI: 3.17 to 6.82; p < 0.001, and 3.44; 95% CI: 2.20 to 5.39; p < 0.001, respectively)、メロキシカム(HR: 3.03; 95% CI: 1.68 to 5.47; p < 0.001, and 2.80; 95% CI: 1.40 to 5.60; p < 0.001, respectively)でした。NSAID治療は心筋梗塞後、心血管事象、出血事象の有意な上昇を認めました。原則的に、心筋梗塞後はNSAID治療は避けるべきですが、セレコキシブ、メロキシカムは、NSAIDが避けられない場合の代替選択肢として考慮しても良いだろうと論文ではまとめています。詳しくは論文をご覧ください。
https://www.onlinejacc.org/content/76/5/518
心筋梗塞後のNSAIDは有害なので避けるべきという報告です。心筋梗塞でステント留置後はバイアスピリンが原則的に処方されていることが多いので、消炎鎮痛作用自体が悪いというよりは、バイアスピリンにNSAIDが上乗せされることで抗血栓作用が過剰になるということでしょうか。セレコキシブ(セレコックス)、メロキシカム(モービック)を代替選択肢として挙げていますが、心血管事象または出血事象は2.80から4.65倍と上昇してしまっているので、NSAID自体を避けるのが一番安全ということでしょう。
2020/8/4、心筋梗塞後の非ステロイド性消炎薬と心血管リスク、出血リスクの関係を調べた研究「Cardiovascular and Bleeding Risks Associated With Nonsteroidal Anti-Inflammatory Drugs After Myocardial Infarction」の要旨をまとめました。