日常臨床における前方循環の大血管閉塞による虚血性脳卒中で発症6時間を超えた例に対する血管内治療の転帰と安全性を調べるために、イタリアの血管内血栓除去療法の登録研究から、発症6時間超の治療の臨床転帰のデータを収集しました。組み込み基準としては、前脳卒中、mRSスコア2以上、ASPECTスコア6以上、CT所見上、低灌流領域と梗塞コアサイズの差から、CT付随スコアから、灌流ミスマッチ、と判断された例としました。主要転帰は90日後のmRSスコアとしました。安全性転帰は90日後の死亡率、症候性頭蓋内出血の発生率としました。データを6時間以内に治療開始した例と比較しました。結果、3057例のうち、327例は6時間を超えてから治療開始していました。平均年齢66.8歳、NIHSSスコアの中央値16、発症から治療開始時間の平均値430分でした。最も頻度が高い閉塞部位は中大脳動脈45.1%でした。90日後のmRSスコア0-2、機能的に独立している割合は41.3%に達しました。症候性頭蓋内出血は6.7%に発生、3ヶ月後の死亡率は171.%でした。mRSスコアごとの生存率は、0-2(odds ratio, 0.58 [95% CI, 0.43–0.77])、6時間超で治療開始した例は、6時間以内に治療開始した例と比べて有意に低値でした。6時間以内と6時間超の両群間で再開通率、安全性転帰の差を認められませんでした。6時間から12時間で治療開始した場合278例と、12時間から24時間で治療開始した場合49例で、転帰に差を認めませんでした。リアルワールド研究から、大血管閉塞でCTによる灌流と循環の評価を行い症例を選択すれば、6時間を超えた血管内治療は、症候性頭蓋内出血を増やすことなく、安全に実施可能であると論文ではまとめています。詳しくは論文をご覧ください。
https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/STROKEAHA.119.027974
発症から6時間を超えた脳卒中においても、頭部画像検査にて症例を選択すれば、安全に血管内治療を実施可能であったという報告です。頭部画像検査による拡散灌流ミスマッチ(diffusion perfusion mismatch: DPM)がキーです。
2020/6/17、発症から6時間を超えた急性虚血性脳卒中に対する血管内血栓除去療法についてリアルワールドの成績を調べた研究「Endovascular Thrombectomy for Acute Ischemic Stroke Beyond 6 Hours From Onset: A Real-World Experience」の要旨をまとめました。