2020/8/4、サルコメアタンパク変異キャリアにおける肥大型心筋症の発症率について調べた研究「Penetrance of Hypertrophic Cardiomyopathy in Sarcomere Protein Mutation Carriers」の要旨をまとめました。

2020/8/4、サルコメアタンパク変異キャリアにおける肥大型心筋症の発症率について調べた研究「Penetrance of Hypertrophic Cardiomyopathy in Sarcomere Protein Mutation Carriers」の要旨をまとめました。サルコメアたんぱく質の遺伝子変異を原因とする肥大型心筋症の予測遺伝子スクリーニングは現在標準的なケアの一部ですが、肥大型心筋症を発症していない遺伝子変異キャリアの長期転帰は十分にわかっていませんでした。サルコメアたんぱく質遺伝子変異キャリアのうち、肥大型心筋症の新規診断の発生率を調べるために、家族スクリーニングによってサルコメアたんぱく質遺伝子変異キャリアと確定された成人、小児で、初回の評価では肥大型心筋症の診断基準を完全に満たさなかった例を対象に後ろ向き解析を実施しました。結果、156家族、285例、中央値年齢14.2再、男性141例(49.5%)、145例(50.9%)は心臓MRI検査を受けました。原因遺伝子と頻度としては、MYBPC3変異123例(43.2%)、MYH7変異69例(24.2%)、TNNI3変異39例(13.7%)、TNNT2変異34例(11.9%)、TPM1変異9例(3.2%)、MYL2変異6例(2.1%)、ACTC1変異1例(0.4%)、多数変異4例(1.4%)でした。中央値8.0年間の追跡、86例(30.2%)が肥大型心筋症を発症、50例中16例は心臓MRIにて診断基準を完全に満たしましたが、心エコーではそうではありませんでした。推算の肥大型心筋症の浸透度(penetrance)は、15年間追跡で46%(95% confidence interval [CI]: 38% to 54%)と推定されました。年齢調整多変量モデル、心臓MRIの層別化の結果、肥大型心筋症発症の独立した危険因子は、女性(hazard ratio [HR]: 2.91; 95% CI: 1.82 to 4.65)、心電図異常(HR: 4.02; 95% CI: 2.51 to 6.44)、TNNI3変異は低リスク(HR: 0.19; 95% CI: 0.07 to 0.55, compared to MYBPC3)ということがわかりました。初回スクリーニングで陰性例のフォローで、サルコメアたんぱく質遺伝子変異キャリアの約50%が15年の追跡で肥大型心筋症を発症すると相当しました。女性、心電図異常は肥大型心筋症発症のハイリスクと関連していました。長期のスクリーニングでは定期的な心臓MRIを考慮すべきでしょうと論文ではまとめています。詳しくは論文をご覧ください。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32731933/
サルコメア遺伝子変異はどの程度、肥大型心筋症の発症に関連するか調べた結果、15年間で46%に相当するという報告です。遺伝子変異の浸透度(penetrance)は強く、定期的な心臓MRIによるフォローが進められるとまとめています。


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