2020/6/5、COVID-19流行と退役軍人病院の救急外来の受診について調べた研究「Admissions to Veterans Affairs Hospitals for Emergency Conditions During the COVID-19 Pandemic」の要旨をまとめました。

2020/6/5、COVID-19流行と退役軍人病院の救急外来の受診について調べた研究「Admissions to Veterans Affairs Hospitals for Emergency Conditions During the COVID-19 Pandemic」の要旨をまとめました。COVID-19流行期間で、救急疾患、待機的手術も含む入院が減少したとの報告があります。治療が迅速に必要な入院の減少は公衆衛生的に有意な課題です。退役軍人省はアメリカで最も大きな健康保険団体です。退役軍人省ではCOVID-19流行期間のキャンセルされた待機的手術、救急疾患の継続的に入手可能です。本研究では、退役軍人病院にて、流行期間中、6つの救急疾患の入院数の変化を評価しました。退役軍人の家族も含む外来受診の電子カルテデータの全国登録、「VA’s Corporate Data Warehouse」からデータを解析しました。COVID-19流行期間、2019年、2020年の最初の16週間と、2008年から2018年の過去の退役軍人コホートと、退役軍人病院にて、6つの頻度の高い救急疾患について傾向を調べました。2020年の第5週1/29から第10週3/10まで、第11週3/11から第16週まで、入院数、人口統計的特徴を比較しました。人口統計的サブグループとしては、疾病及び関連保健問題の国際統計分類「International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems Tenth Revision: ICD-10」の診断コードに基づいて、脳卒中(I60-I69)、心筋梗塞(I21-I22)、心不全(I50)、慢性閉塞性肺疾患(J44)、虫垂炎(K37)、肺炎(J10-J18)の6つとしました。2020年の第11週から第16週までの一日あたりの入院数の発生率比(Incidence rate ratios: IRRs)は、2019/1/から2020年の第10週までと比べて、季節変動、時期の影響等を調整後、Poisson回帰を用いて推算しました。「Stata version 15」にて解析を実施しました。退役軍人ニューヨークハーバー健康システムの独立倫理委員会にて審査を経ました。結果、退役軍人入院施設のコホートから入院数は、2020年第5週77624例から、第11週から第16週では45155例、41.9%減少(IRR, 0.57; 95% CI, 0.51-0.64)を認めました。年齢中央値66.6歳、男性93.5%、白人69.0%、黒人24.6%でした。2020年の第5週から第10週までと、第11週から第16週までで、入院例の特徴、重症度は同等でした。2020年の第5週から第10週までと第11週から第16週までで、脳卒中の入院数は1375例から661例に51.9%減少(IRR, 0.44; 95% CI, 0.33-0.59)、心筋梗塞は795例から475例に40.3%減少(IRR, 0.59; 95% CI, 0.50-0.69)、慢性閉塞性肺疾患1701例から877例に48.4%減少(IRR, 0.51; 95% CI, 0.38-0.68)、心不全1255例から639例に49.1%減少(IRR, 0.53; 95% CI, 0.42-0.67)、虫垂炎236例から134例に56.7%減少(IRR, 0.56; 95% CI, 0.45-0.70)でした。対照的に、2019年の同期間と比べて、全体の入院数、各疾患別では減少を認めませんでした。肺炎に関しては、2019年の第11週から第16週まで13.7%減少、2020年28.3%減少(IRR, 0.79; 95% CI, 0.65-0.95)、SARS-CoV-2(severe acute respiratory syndrome coronavirus 2)検査陽性例を除外した場合、肺炎入院は2020年は45.7%減少(IRR, 0.61; 95% CI, 0.49-0.77)を認めました。2020年第11週から第16週までの期間の入院において、SARS-CoV-2陽性は第5週から第10週までの期間は26例だったのに対し、2458例でした。2020/3/11から4/21まで、それ以前の6週間と比べて、退役軍人入院施設へ入院数は救急外来で重症ではない例も含めて42%減少していました。救急治療を必要とする中程度の入院は大幅に減少しており、全体の入院の減少と同程度で、待機的手術の減少、ストレスの減少、病原体、感染源への暴露の減少とはあまり関係がないようでした。むしろ、SARS-CoV-2感染のリスクを最小限にするために病院を避けているようでした。本研究の限界としては、退役軍人の集団のみであり、一般集団を反映していない可能性があること、2019年までの退役軍人コホートを使用していることがあります。入院数が減少したことの臨床的影響は十分にわかっていないため、院外死亡率データも用いた長期の研究の必要があります。しかしながら、入院数の減少は、救急治療を必要としていても入院治療が受けられないなど、健康、転帰に関わる深刻な課題です。詳しくは論文をご覧ください。
https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2767061
アメリカの退役軍人病院の受診データからCOVID-19流行前後で救急外来受診の変化の分析の結果、脳卒中51.9%減、心筋梗塞40.3%減、慢性閉塞性肺疾患48.4%減、心不全49.1%減、SARS-CoV-2以外の肺炎45.7%減との報告です。ほぼ全ての救急疾患が40%から50%減少しているとは驚きです。勿論、脳卒中や心筋梗塞の発症率が急に半分に減ったとは考えにくいので、脳卒中や心筋梗塞を起こしても病院に来ない人がいるということが推測されます。ヤフーの記事にもなっていました。
「コロナがコロナ以外の疾患に与える影響」
https://news.yahoo.co.jp/byline/kutsunasatoshi/20200816-00191694


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