2020/8/4、SARS-CoV-2の抗原決定基に対するT細胞の交差反応について調べた研究「Selective and cross-reactive SARS-CoV-2 T cell epitopes in unexposed humans」の要旨をまとめました。SARS-CoV-2に対する人間の免疫反応に関してはまだ十分にわかっていないことが多いです。SARS-CoV-2に反応するCD4陽性T細胞は暴露前の症例から報告されており、20-50%の人口においてメモリーT細胞の交差反応が存在する可能性が示唆されています。T細胞の交差反応の根拠は不十分でした。SARS-CoV-2が発見された2019年よりも以前の血液検体を用いて、SARS-CoV-2特異的CD4陽性T細胞レパートリーを刺激するSARS-CoV-2遺伝子と交差反応を示す142種類のT細胞の抗原決定基(epitopes)を特定、マッピングしました。SARS-CoV-2に同程度に反応するCD4陽性メモリーT細胞の交差反応が存在することを特定、普通感冒(common cold)を引き起こすコロナウイルス4種類、HCoV-OC43、HCoV-229E、HCoV-NL63、HCoV-HKU1でした。普通感冒コロナウイルスに対するメモリーT細胞はCOVID-19に対しても遺伝子相違性を超えて共通している可能性があると論文ではまとめています。詳しくは論文をご覧ください。
https://science.sciencemag.org/content/early/2020/08/04/science.abd3871
細胞性免疫の中核を担うT細胞のうち、過去に感染した病原体に対する免疫記憶を担うメモリーT細胞が、HCoV-OC43、HCoV-229E、HCoV-NL63、HCoV-HKU1と、SARS-CoV-2で共通している可能性があるという報告です。B細胞が担う液性免疫では抗体の早期消失の可能性が騒がれていますが、T細胞が担う細胞性免疫によって獲得免疫を得ていくのかも知れません。人間の身体というのはよく出来ていますね。日経メディカルでも記事になっていました。
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/t344/202008/566863.html
2020/8/4、SARS-CoV-2の抗原決定基に対するT細胞の交差反応について調べた研究「Selective and cross-reactive SARS-CoV-2 T cell epitopes in unexposed humans」の要旨をまとめました。