2020/8/7、長期の抗凝固療法と心血管転帰、出血リスク、血圧達成を直接トロンビン阻害薬ダビガトランとワーファリンで比較した研究「Cardiovascular outcomes, bleeding risk, and achieved blood pressure in patients on long-term anticoagulation with the thrombin antagonist dabigatran or warfarin: data from the RE-LY trial」の要旨をまとめました。

2020/8/7、長期の抗凝固療法と心血管転帰、出血リスク、血圧達成を直接トロンビン阻害薬ダビガトランとワーファリンで比較した研究「Cardiovascular outcomes, bleeding risk, and achieved blood pressure in patients on long-term anticoagulation with the thrombin antagonist dabigatran or warfarin: data from the RE-LY trial」の要旨をまとめました。心血管疾患のハイリスク群において、収縮期血圧と拡張期血圧の達成と心血管イベントの間には「J字関係」があると言われています。経口抗凝固療法中においても同様か調べるために、心房細動に対する経口抗凝固薬、「RE-LY」試験のデータから、死亡、脳卒中または全身性塞栓症、出血リスクと収縮期血圧、拡張期血圧の関係を調べました。「RE-LY」試験では、2005年から2007年まで試験登録、2年間追跡、54カ国、951施設、18113例が試験に参加、完全な血圧データがある18107例を対象に、追跡中央値2.0年、追跡完了率99.9%でした。平均収縮期血圧、拡張期血圧の達成度と全死亡、脳卒中、全身性塞栓症イベント、大出血、全ての出血との関係を解析しました。治療群において、収縮期血圧140mmHg超、収縮期血圧120mmHg未満は、収縮期血圧120-130mmHgを対照とした場合に、全死亡の増加と関連を認めました。全身性塞栓症のリスクは収縮期血圧110mmHg未満においても変化はありませんでしたが、140-160mmHg(adjusted hazard ratio (HR) 1.81; 1.40–2.33)、収縮期血圧160mmHg以上(HR 3.35; 2.09–5.36)で増加しました。大出血イベントも同様に収縮期血圧110mmHg未満、110-120以下で増加しました。興味深いことに、収縮期血圧130mmHg超においては大出血リスクは増加しませんでした。同様の傾向は拡張期血圧においても認められ、拡張期血圧70mmHg未満(HR 1.55; 1.35–1.78)、拡張期血圧90mmHg超(HR 1.88; 1.43–2.46)では、拡張期血圧70-80mmHgを対照とした場合に、全死亡の増加と関連を認めました。全出血リスクは、拡張期血圧70mmHg未満(HR 1.46; 1.37–1.56)、拡張期血圧80-90mmHg(HR 1.13; 1.06–1.31)において増加、拡張期血圧が高くてもリスクは増加しませんでした。ダビガトラン150mg1日2回は全死亡、全身性塞栓症にとって有益、ダビガトラン110mg1日2回は大出血、全出血にとって収縮期血圧、拡張期血圧とは無関係に有益でした。同様の結果はベースライン血圧、最終更新血圧、時変共変量血圧においても同様でした。収縮期血圧が低いことは心房細動の経口抗凝固療法において、死亡、全身性塞栓症、出血リスクの増加と関連していました。大出血は高い血圧において発生しませんでした。ハイリスク群において低い血圧は死亡リスクだけではなく出血リスクにおいてもリスク因子かも知れないと論文でまとめています。詳しくは論文をご覧ください。
https://academic.oup.com/eurheartj/article/41/30/2848/5834921
ダビガトラン(プラザキサ)の臨床試験「RE-LY」試験のサブ解析です。血圧高値は一般的に出血リスクではありますが、血圧が低いことも出血リスクと関係したという報告です。個人的な意見としては、この論文の結果を元に抗凝固療法中の血圧を高いまま放置するのはやはり危険であり、出血リスクを最小限に抑えるため、血圧コントロールをしていくほうが安全だと考えます。論文においても最も安全であったのが、収縮期血圧120-130mmHg、拡張期血圧70-80mmHgとのことです。詳しくは主治医までご相談ください。


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