2020/10/8、複雑冠動脈疾患に対する血行再建の選択において経皮的または外科的の個別化意思決定のための「SYNTAX II」スコアの再開発と検証の研究「Redevelopment and validation of the SYNTAX score II to individualise decision making between percutaneous and surgical revascularisation in patients with complex coronary artery disease: secondary analysis of the multicentre randomised controlled SYNTAXES trial with external cohort validation」の要旨をまとめました。

2020/10/8、複雑冠動脈疾患に対する血行再建の選択において経皮的または外科的の個別化意思決定のための「SYNTAX II」スコアの再開発と検証の研究「Redevelopment and validation of the SYNTAX score II to individualise decision making between percutaneous and surgical revascularisation in patients with complex coronary artery disease: secondary analysis of the multicentre randomised controlled SYNTAXES trial with external cohort validation」の要旨をまとめました。無作為化試験によって、新しい治療介入の有効性を検証するため、平均的な治療効果の典型的な報告の要約としてのゴールドスタンダードであると考えられています。治療結果は症例ごとに異なるため、個別症例ごとの治療決定を平均的な治療効果に当てはめることは適切ではない(suboptimal)可能性があります。複雑冠動脈疾患における至適な血行再建戦略を選択するための個別意思決定ツールを開発しました。「SYNTAXES」(SYNTAX Extended Survival)試験は、2005年から2007年、北アメリカ、ヨーロッパ18カ国、85施設、多施設無作為化試験の医師主導型の追加追跡試験です。新規の3枝病変、主幹部冠動脈疾患を対象に、経皮的冠動脈形成術(percutaneous coronary intervention: PCI)群、冠動脈バイパス術群(coronary artery bypass grafting: CABG)群に無作為に割り振りました。「SYNTAXES」試験では10年全死亡を調べました。Cox比例モデルを用いて、3枝病変か主幹部冠動脈疾患か、解剖学的「SYNTAX」か、過去のエビデンスに基づいて選択した、治療方針の経皮的冠動脈形成術か冠動脈バイパス術かの適応と2項目の事前設定影響修飾因子の二次ステージを組み合わせて、10年死亡を予測する臨床予測指標を開発しました。同様の技術を用いて、経皮的冠動脈形成術または冠動脈バイパス術後の主要有害心血管事象(全死亡、非致死的脳卒中、非致死的心筋梗塞)の5年リスクを予測するモデルを開発しました。「SYNTAX」試験1800例の横断検証、「FREEDOM」「BEST」「PRECOMBAT」試験、蓄積3380例の外部検証によって、死亡、主要有害心血管事象リスク、経皮的冠動脈形成術と冠動脈バイパス術で絶対リスク差を算出、推算ベネフィット等の両群間の差を予測するためのモデルの性能を評価しました。concordance指標を使用、識別能の評価、キャリブレーションプロットを使用、予測、観察の一致率を評価しました。結果、横断検証において、「SYNTAX score II」を新規に開発、「SYNTAX score II 2020」と名付け、10年間の全死亡(C-index=0·73 [95% CI 0·69–0·76] for PCI and 0·73 [0·69–0·76] for CABG)、5年間の主要有害心血管事象(C-index=0·65 [0·61–0·69] for PCI and C-index=0·71 [0·67–0·75] for CABG)、両治療群の識別能の有用性を示しました。外部検証においては、「SYNTAX score II 2020」は、識別能(C-index=0·67 [0·63–0·70] for PCI and C-index=0·62 [0·58–0·66] for CABG)、5年間の主要有害心血管事象の予測において良好な較正(good calibration)を示しました。冠動脈バイパス術の経皮的冠動脈形成術に比べた推算治療ベネフィットは試験集団によってばらつきがあり、予測ベネフィットの較正は良好でした。10年死亡、5年主要有害心血管事象の予測のための「SYNTAX score II 2020」は、経皮的冠動脈形成術か冠動脈バイパス術か個人のベネフィットの特定に役立つ可能性があります。ハートチームのサポート、至適な血行再建戦略を選択するための有用だろうと論文ではまとめています。詳しくは論文をご覧ください。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33038944
複雑冠動脈病変に対して経皮的冠動脈形成術か冠動脈バイパス術か血行再建戦略選択は昔からある課題の一つですが、スコアリングによって識別可能で、今回、さらに改良を加えたとの論文です。「SYNTAX score」に関して詳しくは「SYNTAX score」のホームページをご覧ください。
http://www.syntaxscore.com/index.php/12-news/1-new-syntax-score-ii-calculator-available-now
スコアリングの開発は技術的には極めてローテクノロジーですが、スコアリングだけでPCIかCABGか判別可能であれば臨床的には大いに有用です。日経メディカルでも記事になっていました。
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/lancet/202010/567646.html


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