2020/10/27、持続性心房細動に対して、左心房斜静脈へのエタノール注入とカテーテルアブレーションとカテーテルアブレーション単独を比較した研究「Effect of Catheter Ablation With Vein of Marshall Ethanol Infusion vs Catheter Ablation Alone on Persistent Atrial Fibrillation The VENUS Randomized Clinical Trial」の要旨をまとめました。

2020/10/27、持続性心房細動に対して、左心房斜静脈へのエタノール注入とカテーテルアブレーションとカテーテルアブレーション単独を比較した研究「Effect of Catheter Ablation With Vein of Marshall Ethanol Infusion vs Catheter Ablation Alone on Persistent Atrial Fibrillation The VENUS Randomized Clinical Trial」の要旨をまとめました。永続性心房細動に対するカテーテルアブレーションの成功率において、肺動脈隔離術(pulmonary vein isolation)以外の主義戦略の治療成績の向上は一貫していません。左心房斜静脈またはマーシャル静脈(vein of Marshall)は、神経支配、心房細動のトリガーと関連する可能性があり、エタノール注入によって化学的焼灼が可能です。永続性心房細動に対して、カテーテルアブレーションに追加して、左心房斜静脈へのエタノール注入を追加することは、アブレーション成績を改善するか調べるために、アメリカ、12施設にて、医師主導型、国立衛生研究所(National Institutes of Health: NIH)助成、無作為化単盲検試験、「VENUS」(Vein of Marshall Ethanol for Untreated Persistent AF)試験を実施しました。2013年から2018年まで、心房細動で初回アブレーション350例を登録、2019年まで追跡しました。カテーテルアブレーション単独群158例、カテーテルアブレーションと左心房斜静脈へのエタノール注入の組み合わせ群185例、左心房斜静脈への逆行性にエタノール注入の手技は15%失敗と見積もり、1:1.15の割合で無作為に割り振りました。主要評価項目は単回手技後、6ヶ月、12ヶ月、抗不整脈薬なしで、心房細動なし、30秒間以上の心房頻拍なしの期間としました。転帰の評価は治療とは無作為に盲検で実施しました。副次評価項目は12項目、心房細動負荷、複数回手技後の心房細動なし、僧帽弁周囲ブロック、他としました。結果、343例、平均年齢66.5歳、男性261例、316例(92.1%)試験完了、左心房斜静脈へのエタノール注入は185例中155例成功しました。6ヶ月後、12ヶ月後、単回手技後、心房細動、心房頻拍なしの割合は、カテーテルアブレーションと左心房斜静脈へのエタノール注入の併用群49.2%(91/185)、カテーテルアブレーション単独群38%(60/158)、有意差(difference, 11.2% [95% CI, 0.8%-21.7%]; P = .04)を認めました。12項目の副次評価項目のうち、9項目は有意差を認めませんでしたが、心房細動負荷(zero burden in 78.3% vs 67.9%; difference, 10.4% [95% CI, 2.9%-17.9%]; P = .01)、複数回手技後の心房細動なし(65.2% vs 53.8%; difference, 11.4% [95% CI, 0.6%-22.2%]; P = .04)、僧帽弁周囲ブロックの達成(80.6% vs 51.3%; difference, 29.3% [95% CI, 19.3%-39.3%]; P < .001)は、左心房斜静脈治療群において有意に改善を認めました。有害事象は両群間で同様でした。持続性心房細動、カテーテルアブレーションに左心房斜静脈へのエタノール注入を追加することは、カテーテルアブレーション単独と比べて、6ヶ月後、12ヶ月後の心房細動なし、心房頻拍なしの尤度比上昇を関連を認めました。長期の有効性の評価のためにさらなる研究が必要です。詳しくは論文をご覧ください。
https://jamanetwork.com/journals/jama/article-abstract/2772281
左心房斜静脈はマーシャル静脈(Marshall’s vein)とも呼ばれ、発生時に左上大静脈に由来し、左心耳、左肺静脈の間を走行、冠静脈洞へ注ぐ静脈です。この静脈に逆行性にエタノールを注入することで、心房細動アブレーションの成績の向上において有意差を認めたとの報告です。アメリカ、テキサス州のヒューストンメソジスト病院心臓血管センターらの論文です。
https://funatoya.com/funatoka/anatomy/spalteholz/J551.html


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