2020/11/11、フィナステリド治療と自殺傾向、心理的有害事象との関係について調べた研究「Investigation of Suicidality and Psychological Adverse Events in Patients Treated With Finasteride」の要旨をまとめました。脱毛症、良性前立腺肥大症の管理の薬としてのフィナステリドの有害事象は議論が分かれています。2012年、フィナステリド使用の男性、自殺未遂(attempted suicide)、自殺完遂(completed suicide)の調査を開始しました。自殺傾向、構想(ideation)、企図(attempt)、完遂(completed)と、心理的有害事象、うつ(depression)、不安(anxiety)と、フィナステリド使用との関係を調べるために、世界保健機関の個別症例の安全性報告のグローバルデータベース「VigiBase」のフィナステリドの報告から、有害反応の症例、非症例デザインの非均等解析、薬剤安全性症例対照研究を実施しました。関係の強さを調べるために、不均等解析のサロゲート測定、報告オッズ比を使用しました。2012年前後、自殺傾向の報告、広範囲感度解析、良性前立腺肥大症、脱毛症による層別化、年齢45歳以下か45歳超か、フィナステリド、同類薬として脱毛症に対するミノキシジル、良性前立腺肥大症に対してタムスロシンの比較、フィナステリドと同類の作用機序、有害事象プロファイルとしてデュタステリドを比較しました。2019年、2020年まで解析を実施しました。フィナステリド使用と自殺傾向、心理的有害事象との関係を開先しました。「VigiBase」データベース、フィナステリド使用、自殺傾向356例、心理的有害事象2926例、全3282例、男性3206例(98.9%)、18歳から44歳でデータ入手可能868例中615例(70.9%)でした。フィナステリドにて、自殺傾向(ROR, 1.63; 95% CI, 1.47-1.81)、心理的有害事象(ROR, 4.33; 95% CI, 4.17-4.49)の有意な不均等性を認めました。感度解析では、若年(ROR, 3.47; 95% CI, 2.90-4.15)、脱毛症(ROR, 2.06; 95% CI, 1.81-2.34)は自殺傾向の有意な不均等性因子でした。良性前立腺肥大症の高齢者ではそのような関連は認めませんでした。感度解析は、2012年以降(ROR, 2.13; 95% CI, 1.91-2.39)有害事象報告は有意に増加していました。本薬剤安全性症例対照研究から、脱毛症、45歳以下において、フィナステリド使用は自殺傾向、心理的有害事象の報告オッズ比の有意な関連を認めました。感度解析の結果、不均等性はフィナステリドの有害事象は、報告、若年者で報告されやすいことに起因している可能性が示唆されました。詳しくは論文をご覧ください。
https://jamanetwork.com/journals/jamadermatology/article-abstract/2772818
フィナステリドは5α-還元酵素阻害薬で、テストステロンからジヒドロテストステロンへの変換を阻害することで、脱毛症または良性前立腺肥大症への効果を発揮します。いわゆる男性らしさ、ジヒドロテストステロンの産生が低下するため、抑うつ、意欲低下等への影響が懸念されていました。フィナステリドを開始する際にはリスクについてもよく話し合うことが必要ですね。メディカルトリビューンでも記事になっていました。
https://medical-tribune.co.jp/news/2020/1117533571
2020/11/11、フィナステリド治療と自殺傾向、心理的有害事象との関係について調べた研究「Investigation of Suicidality and Psychological Adverse Events in Patients Treated With Finasteride」の要旨をまとめました。