2020/11/13、急性心不全入院後の鉄欠乏に対する鉄補充について調べた研究「Ferric carboxymaltose for iron deficiency at discharge after acute heart failure: a multicentre, double-blind, randomised, controlled trial」の要旨をまとめました。


2020/11/13、急性心不全入院後の鉄欠乏に対する鉄補充について調べた研究「Ferric carboxymaltose for iron deficiency at discharge after acute heart failure: a multicentre, double-blind, randomised, controlled trial」の要旨をまとめました。カルボキシマルトース鉄の経静脈投与は慢性心不全、鉄欠乏に対して症状、生活の質を改善することが示されています。急性心不全後の転帰に関して、カルボキシマルトース鉄の有効性をプラセボと比較しるために、ヨーロッパ、南アメリカ、シンガポール、121施設にて多施設二重盲検無作為化試験「AFFIRM-AHF」を実施しました。組み込み基準は、18歳以上、急性心不全で入院、血清鉄欠乏(フェリチン100μg/L未満、100-299μg/Lでトランスフェリン飽和度20%未満)、左室駆出率50%未満としました。退院前、カルボキシマルトース鉄、プラセボ、無作為化、24週間追跡、用量は鉄欠乏の程度に基づきました。盲検のために、治療は黒色のシリンジを使用しました。主要評価項目は52週以内の心不全入院、心血管死亡の複合としました。副次評価項目は52週間以内の心血管入院、心血管死亡の複合、心不全入院、心不全入院までの時間、心血管死亡、心不全入院または心血管死亡までの時間としました。安全性の評価も実施しました。2017年から2019年、1525例スクリーニング、1132例が試験に参加しました。1110例試験開始、1108例、カルボキシマルトース鉄群558例、プラセボ群550例でした。主要評価項目事象は、カルボキシマルトース鉄群293例、100人年あたり57.2、プラセボ群272例、100人年あたり372、有意差(rate ratio [RR] 0·79, 95% CI 0·62–1·01, p=0·059)を認めました。心血管入院、心血管死亡はカルボキシマルトース鉄群370例、プラセボ群451例、有意差(RR 0·80, 95% CI 0·64–1·00, p=0·050)を認めました。心血管死亡は2群間で有意差なし(77 [14%] of 558 in the ferric carboxymaltose group vs 78 [14%] in the placebo group; hazard ratio [HR] 0·96, 95% CI 0·70–1·32, p=0·81)でした。心不全入院はカルボキシマルトース鉄群217例、プラセボ群294例、有意差(RR 0·74; 95% CI 0·58–0·94, p=0·013)を認めました。心不全入院、心血管死亡の複合は、カルボキシマルトース鉄群181例(32%)、プラセボ群209例(38%)、有意差(HR 0·80, 95% CI 0·66–0·98, p=0·030)を認めました。心不全入院、心血管死亡によって失われた日数は、カルボキシマルトース鉄群はプラセボ群と比べて有意差(369 days per 100 patient-years vs 548 days per 100 patient-years; RR 0·67, 95% CI 0·47–0·97, p=0·035)を認めました。重大有害事象はカルボキシマルトース鉄群559例中250例(45%)、プラセボ群551例中282例(51%)発生しました。鉄欠乏、左室駆出率50%未満、急性心不全後、カルボキシマルトース鉄投与は安全に、心不全入院を減少、心血管死亡に対しては影響はありませんでした。詳しくは論文をご覧ください。
https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(20)32339-4/fulltext
心不全における鉄欠乏に対して、鉄補充によって心不全入院の減少を認めたとの報告です。貧血と心不全と関係があるのかと思われるかも知れませんが、心臓が血液を拍出し、赤血球中の鉄が酸素を運搬することを考えると、心不全における鉄欠乏は積極的な治療の対象になるということがわかるかと思います。慢性心不全だけでなく、急性心不全においても鉄欠乏を認めた場合には鉄補充が重要とのメッセージです。

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