2020/12/21、くも膜下出血後、超急性期のトラネキサム酸の投与について調べた研究「Ultra-early tranexamic acid after subarachnoid haemorrhage (ULTRA): a randomised controlled trial」の要旨をまとめました。

2020/12/21、くも膜下出血後、超急性期のトラネキサム酸の投与について調べた研究「Ultra-early tranexamic acid after subarachnoid haemorrhage (ULTRA): a randomised controlled trial」の要旨をまとめました。脳動脈瘤性くも膜下出血においては、トラネキサム酸による短期の抗線溶治療(antifibrinolytic therapy)は出血リスクを減少すると考えられて来ました。しかしながら、投与が臨床転帰を改善するかどうかは十分にわかっていませんでした。超急性期、短期間のトラネキサム酸投与は6ヶ月後の臨床転帰を改善するかどうか調べるために、オランダ、16施設、成人、CT検査でくも膜下出血を認めた連続症例を対象に、通常治療にトラネキサム酸投与する群、対照群として通常治療群に無作為化、転帰評価をマスクした多施設無作為化対照オープンラベル試験を実施しました。トラネキサム酸は診断後、直ちに投与開始、1g急速投与、その後は8時間ごとに1g持続投与、脳動脈瘤の治療前、治療開始24時間後、到着後すぐに投与開始しました。主要評価項目は6ヶ月後の臨床転帰、mRS、良好(0-3)または不良(4-6)としました。安全性一次解析を企画処置解析にて実施しました。結果、2013年から2019年、955例参加、トラネキサム酸群480例、対照群475例でした。企画治療解析の結果、臨床転帰良好はトラネキサム酸375例中287例(60%)、対照群470例中300例(64%)、治療調整後オッズ比0.86(95% CI 0·66–1·12)でした、無作為後または脳動脈瘤治療前の再出血は、トラネキサム酸群49例(10%)、対照群66例(14%)、有意差なし(odds ratio 0·71, 95% CI 0·48–1·04)でした。他の重大有害事象は両群間で同等でした。CT検査にて脳動脈瘤破裂を原因としたくも膜下出血を認めた例において、超急性期、短期間のトラネキサム酸投与は6ヶ月後のmRSにて評価した臨床転帰を改善しませんでした。詳しくは論文をご覧ください。
https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(20)32518-6/fulltext
止血薬としてしばしば使われるトラネキサム酸ですが、くも膜下出血においては転帰を改善しなかったとの報告です。

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