2021/1/22、お茶の水循環器内科の「アップルウォッチ外来」の受診について具体的にまとめました。
【アップルウォッチ外来とは?】
お茶の水循環器内科のアップルウォッチ外来とは、アップルウォッチ等のスマートウォッチを活用して、循環器疾患の中でも主に不整脈の診療に役立てるものです。お茶の水循環器内科ではスマートウオッチ等のウエアラブルデバイスを不整脈の診療に活用することを以前から実践しています。不整脈には様々なものがありますが、正確な診断のためには、症状出現時の心電図記録が決め手になります。症状出現時の心電図記録に成功すれば多くの不整脈が診断可能です。今まで、来院時心電図、ホルター心電図、携帯型心電計、埋込型心電計、電気生理学的検査等、様々なアプローチがありましたが、一長一短があります。このたび、アップルウオッチという選択肢が増えるのは良いことであると考えています。上記の通り、お茶の水循環器内科のアップルウオッチ外来は、上記のように主に不整脈の診療に役立てるものです。フィットネス、自律神経、睡眠等に関しての医学的なご質問に対してはご期待に添えない可能性が高いですが、予めご了承ください。
【アップルウォッチ外来の適応】
お茶の水循環器内科のアップルウォッチ外来では上記のように主に不整脈の診療が目的です。今まで診断の着いていない動悸等の症状で、24時間のホルター心電図等の既存の検査で発作時の心電図記録が捕まっていない場合に良い適応になります。逆に、他の検査が有用と考えられる場合にはアップルウォッチ外来の適応とはなりませんのでご注意ください。以下のような場合は、アップルウォッチ外来よりも有用な検査があります。
・労作時の胸部絞扼感等の自覚症状で、狭心症等の冠動脈疾患が疑われる場合、冠動脈の評価を優先します。アップルウォッチだけで冠動脈の様子はわかりません。冠動脈CT、冠動脈カテーテル検査等の冠動脈を直接評価する検査のほうが有用でしょう。
・不整脈を疑う動悸症状で、24時間以内に何度も症状が出現する場合、通常の24時間のホルター心電図にて診断可能な可能性が高いです。1日少なくとも1回は症状がある場合にはホルター心電図検査から検査を行っていくのが良いでしょう。
・息切れ、浮腫等の心不全を疑う症状がある場合、来院して精査が必要です。アップルウォッチでわかるのは脈の様子のみで限界があります。NT-proBNP、心エコー、心臓MRI等、心機能、弁、心筋、冠動脈等の詳しい評価が必要です。
・睡眠中の動悸や息苦しさ等、睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合、睡眠時無呼吸症候群の検査がありますので、睡眠時無呼吸症候群の検査を受けましょう。
・息切れ、ふらつき、目眩等、低血圧症が疑われる場合、家庭血圧の測定から行って行くのが良いでしょう。アップルウォッチでは低血圧の結果の頻脈等は検出可能ですが、血圧は測定出来ないため、貧血、心不全、甲状腺機能異常等の他の疾患との鑑別も必要なため、アップルウォッチのみで診断するのは難しいでしょう。
・動悸、息苦しさ、倦怠感等、非定型的な症状で、心疾患以外の可能性も含めて総合的に診察が必要な場合、アップルウォッチでわかるのは脈の様子のみです。不整脈以外の疾患に関しては情報量が乏しいのが現状です。心疾患以外の可能性も含めて受診するほうが望ましいでしょう。
・また、お茶の水循環器内科のアップルウオッチ外来は、上記のように主に不整脈の診療に役立てるものです。フィットネス、自律神経、睡眠等に関しての医学的なご質問に対してはご期待に添えない可能性が高いですが、予めご了承ください。
アップルウォッチ外来の適応について、お電話等でお問合せいただく方がいますが、電話にて相談を行っていません。本ページの内容をよく読み、一度ご受診ください。
【アップルウォッチ外来で必要なもの】
アップルウォッチ外来に必要なものは「心電図機能の有効化されたアップルウォッチ」です。2021/1/22、日本のアップルウォッチにて「Apple Watchに心電図アプリケーションと不規則な心拍の通知機能が登場」が発表されました。
https://www.apple.com/jp/newsroom/2021/01/ecg-app-and-irregular-rhythm-notification-coming-to-apple-watch
対象となるアップルウォッチは、心電図アプリケーションが「Apple Watch Series 4、5、6」、不規則な心拍の通知機能が「Apple Watch Series 3以降」です。「watchOS 7.3」のリリースにて有効化されます。両方の機能を使うためには「Apple Watch Series 4以降」を購入すれば間違いないということになります。お茶の水循環器内科では2020/9/7からアップルウォッチ外来を行っていますが、今までは心電図機能が有効な海外の地域で購入、アクティベートしたアップルウォッチを手に入れる必要がありました。今回、日本で購入、アクティベートしたアップルウォッチでも心電図機能が使えるようになったとのことで、待ちに待っていたアップデートが実現しました。詳しくは下記ページをご覧ください。
「2021/1/22、日本のアップルウォッチにて「Apple Watchに心電図アプリケーションと不規則な心拍の通知機能が登場」が発表されました。」
https://ochanomizunaika.com/22487
【アップルウォッチ外来の実例】
お茶の水循環器内科のアップルウォッチ外来にて受診して良かった例を紹介します。個人情報が特定出来ない範囲で、一般化しています。アップルウォッチ外来の際の参考にしてください。
・以前から不定期の動機症状を自覚、もともと海外で購入したアップルウォッチにて発作時の心電図記録、「発作性心房細動」であることがわかり、カテーテルアブレーション治療を実施しました。
・以前から不定期の動悸症状を自覚、心電図、ホルター心電図では捕まらず、原因不明となっていたが、発作時の心電図記録で「発作性上室性頻拍」の補足に成功、カテーテルアブレーション治療にて根治しました。
・心房細動のカテーテルアブレーション治療後、不定期の動機症状を自覚、心房細動の再発ではないかと不安が強かったが、心電図記録にて心房細動でないことを確認、日常生活で心電図記録を役立てつつ経過観察しています。
・心臓ペースメーカー埋込み後、些細な心臓の動きが気になるようになってしまい、アップルウォッチを海外にて入手、動悸症状に一致してペースメーカーの動作確認刺激、心室期外収縮、洞性頻脈であることがわかり、ペースメーカー不良ではないことを確認、経過観察に役立てています。
・受験生で動悸を自覚、勉強に集中出来ない、命に関わる不整脈であったらどうしようかと心配、自覚症状出現時の心電図記録で洞性頻脈であることがわかり、よく問診したところ直前にエナジードリンクを飲んでいた後ことが判明、多い時で1日3本飲んでいたのを控えるように指導、その後動悸症状はなくなりました。
【よくある質問について】
・アップルウオッチ外来では具体的にどのようなことをやるのですか?
まずはアップルウオッチの記録波形を確認、不整脈の疑いを評価します。同時に、問診票、問診にて既往歴、危険因子、臨床症状等から総合的に不整脈の可能性を評価します。「不整脈の疑いが高い」と判断した場合には、正確な診断のために、心電図検査、ホルター心電図検査、必要に応じて電気生理学的検査、採血検査、エコー検査、冠動脈CT検査、心臓MRI検査等を追加します。捕まりにくい不整脈も、電気生理学的検査による誘発や埋込型心電計による長期追跡などによって診断可能になって来ました。詳しくは下記ページをご覧ください。
ホルター心電図→http://循環器内科.com/holter
電気生理学的検査→http://循環器内科.com/eps
埋込型心電計→http://循環器内科.com/icm
・不整脈とは具体的にどのようなものがありますか?
不整脈には、心室細動や心室頻拍等の致死的な不整脈から、脳梗塞の原因となる不整脈である心房細動、特に治療の必要のない正常範囲の脈の乱れとしての心室期外収縮、上室期外収縮、洞性頻脈など多岐に渡ります。正確な診断のためには症状出現時の心電図記録が極めて重要です。詳しくは下記ページをご覧ください。
動悸の診療の進め方→http://循環器内科.com/palpitation
・アップルウオッチは自分で用意するのですか?
はい、ご自身のアップルウオッチをご用意いただきます。お茶の水循環器内科では、レンタルサービス、クリニックにおける販売等の予定はありません。
・アップルウオッチはどれが良いですか?
「心電図記録が可能なアップルウオッチ」であることが条件です。すでにアップルウオッチをご購入の方で、「心電図記録が可能なアップルウオッチ」をお持ちの方はそちらでOKです。地域と「watchOSで利用できる機能」は以下の公式ページにて確認可能です。
https://www.apple.com/jp/watchos/feature-availability/#branded-ecg
https://www.apple.com/jp/watchos/feature-availability/#branded-atrail-fib
2021/1/22、日本のアップルウォッチにて「Apple Watchに心電図アプリケーションと不規則な心拍の通知機能が登場」が発表されました。
https://www.apple.com/jp/newsroom/2021/01/ecg-app-and-irregular-rhythm-notification-coming-to-apple-watch/
対象となるアップルウォッチは、心電図アプリケーションが「Apple Watch Series 4、5、6」、不規則な心拍の通知機能が「Apple Watch Series 3以降」です。「watchOS 7.3」のリリースにて有効化されます。両方の機能を使うためには「Apple Watch Series 4以降」を購入すればOKです。2021/1/27、「watchOS 7.3」「iOS 14.4」リリースされ、日本のアップルウォッチにて「心電図アプリケーション」「不規則な心拍の通知機能」が使えるようになりました(2021/1/7追記)。
・アップルウオッチ以外で良いものはありますか?
アップルウオッチ以外ですと、オムロンの「携帯型心電計 HCG-801」が有用です。日本の「管理医療機器」を取得しています。症状出現時の心電図記録に成功すればOKです。詳しくは下記の携帯型心電計のページをご覧ください。
携帯型心電計→http://循環器内科.com/hcg
・「心電図記録が可能なアップルウオッチ」でないとダメですか?
やや専門的になりますが、心拍数(Heart Rate: HR)、脈拍数(Pulse Rate: PR)のみしかわからないウエアラブルデバイスはたくさんあります。しかし、1分間あたりの心拍数(Beats Per Minute: BPM)の情報はわかるのですが、心拍1拍1拍の情報がわからないのが難点です。心電図(electrocardiogram: ECG)がわかることが必要です。不整脈の種類によっては発作性にしか出ないものであったり、心拍数の数値には異常が検出出来ないものもあり、BPMだけでは限界があるのが現状です。心拍数の変動の仕方によっては特定の不整脈を疑うなどはある程度の推測ですが、推測の域を出ないことがほとんどで、正確な診断には向きません。心電図について詳しくは下記ページをご覧ください。
心電図→http://循環器内科.com/ecg
・アップルウオッチの精度はどうですか?
日本では医療機器承認がまだでしたのでエビデンスは少ないのですが、アメリカではすでに「Apple Heart Study」という臨床研究がスタートしています。心房細動に関して診断精度は一致率84%と一次スクリーニングとしては良い成績が報告されています。ただ、アップルウオッチの診断精度は100%ではないので、アップルウオッチ外来で心電図、ホルター心電図検査を改めて行う必要性があります。詳しくは下記ページをご覧ください。
https://ochanomizunaika.com/12409
・アップルウオッチ外来の費用はどのくらい掛かりますか?
通常の外来受診と同様です。初診料、実施した検査に応じて心電図検査、ホルター心電図検査、採血検査料等が掛かります。費用は全国の医療機関で共通の診療報酬点数表の通りです。全くの無症状の場合は診察料も自費になることがありますのでご注意ください。
・アップルウオッチ外来は予約の必要はありますか?
予約は必要ありません。お茶の水循環器内科の診療受付時間以内に起こしください。
・なぜアップルウオッチ外来を始めたのですか?
不整脈は症状出現時の心電図記録に成功さえすればほとんどの場合正確な診断が可能です。しかしながら、不整脈には、来院時に症状が消失してしまうなど、診断が難しいものが少なくありません。事実、来院時に症状が消失してしまった場合は、症状から不整脈の存在や種類を疑うのですが、推測の域を出ないことがほとんどで、原因不明ということになってしまいます。来院時心電図の他には、ホルター心電図、携帯型心電図、埋込型心電図、電気生理学的検査等、様々なアプローチは増えて来ましたが、いずれも一長一短があります。このたび、アップルウオッチという新しいアプローチが増えたことで、原因不明ということが少しでもなくなり、正確な診断につながればという思いで、アップルウオッチ外来を始めました。
2021/1/22、お茶の水循環器内科の「アップルウォッチ外来」の受診について具体的にまとめました。