2020/12/9、急性冠症候群の標準治療とリスク評価を比較した研究「Objective Risk Assessment vs Standard Care for Acute Coronary Syndromes A Randomized Clinical Trial」の要旨をまとめました。

2020/12/9、急性冠症候群の標準治療とリスク評価を比較した研究「Objective Risk Assessment vs Standard Care for Acute Coronary Syndromes A Randomized Clinical Trial」の要旨をまとめました。急性冠症候群の治療決定のガイドのため、国際ガイドラインでは、「GRACE」(Global Registries of Acute Coronary Events)リスクスコア「GRS」の使用が推奨されていますが、「GRS」の使用が治療、転帰を改善するか前向きの検証は十分ではありませんでした。急性冠症候群、入院中の治療、臨床転帰において、ガイドライン推奨のGRSの一律の適応の有効性を評価するために、急性心臓病治療サービスの多施設急性冠症候群登録を使用、前向きクラスター無作為化オープンラベル評価項目盲検臨床試験「PROBE」を実施しました。ST上昇型心筋梗塞、非ST上昇型急性冠症候群を対象に、カレンダー月最初の10例を対象に、2014年から2018年、研究登録、2020年まで解析を実施しました。GRS、ガイドライン推奨を使用、一律のリスク層別化の適応、主要評価項目は、早期侵襲的治療、ガイドライン推奨の薬物療法5項目のうち4項目の退院時処方、心臓リハビリテーションの紹介等に基づいたスコアのパフォーマンスとしました。臨床転帰は1年以内の全死亡、心筋梗塞死亡の複合としました。結果、24病院、2318例登録、有効性が認められないため登録中止になりました。中央値年齢65歳、女性684例(29.5%)、ハイリスク1433例(62.9%)でした。ハイリスク群における検証では、主要評価項目3項目において、GRS群、対照群で有意差なし(GRS: 424 of 717 [59.9%] vs control: 376 of 681 [55.2%]; odds ratio [OR], 1.04; 95% CI, 0.63-1.71; P = .88)でした。早期侵襲的治療は対照群で増加(GRS: 1042 of 1135 [91.8%] vs control: 989 of 1183 [83.6%]; OR, 2.26; 95% CI, 1.30-3.96; P = .004)を認めました。ガイドライン推奨薬物療法5項目のうち4項目の処方(GRS: 864 of 1135 [76.7%] vs control: 893 of 1183 [77.5%]; OR, 0.97; 95% CI, 0.68-1.38)、心臓リハビリテーション(GRS: 855 of 1135 [75.1%] vs control: 861 of 1183 [72.8%]; OR, 0.68; 95% CI, 0.32-1.44)は差を認めませんでした。12ヶ月後時点において、GRS介入群は対照群と比べて死亡、心筋梗塞の減少の有意差なし(GRS: 96 of 1044 [9.2%] vs control: 146 of 1087 [13.4%]; OR, 0.66; 95% CI, 0.38-1.14)でした。心臓サービス、ハイリスク群において、一律にGRSを適応することは早期侵襲的治療の増加と関連を認めましたが、他の治療においては差を認めませんでした。低い事象発生率、研究中断、さらなる大規模な無作為化研究の必要性を示唆しています。詳しくは論文をご覧ください。
https://jamanetwork.com/journals/jamacardiology/article-abstract/2773640
「GRACE Risk Score: GRS」は、急性冠症候群後の予後を予測するもので、年齢、心拍数、収縮期血圧、心電図ST異常、クレアチニン、心筋逸脱酵素上昇、経皮的冠動脈形成術、うっ血性心不全の既往、心筋梗塞の既往、来院時心停止、Killipクラス等の項目からなります。今回、一律に適応してみたものの、1年後の転帰予後にあまり有用ではなかったとの報告です。

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