2021/1/22、COVID-19心筋障害の主要原因としての微小血栓について調べた研究「Microthrombi As A Major Cause of Cardiac Injury in COVID-19: A Pathologic Study」の要旨をまとめました。

2021/1/22、COVID-19心筋障害の主要原因としての微小血栓について調べた研究「Microthrombi As A Major Cause of Cardiac Injury in COVID-19: A Pathologic Study」の要旨をまとめました。心筋障害(cardiac injury)はCOVID-19に頻度が高く、予後不良のリスクです。しかしながら、メカニズム、SARS-CoV-2関連の心筋障害の種類については十分にわかっていません。心筋障害の病理学的メカニズムを明らかにするために、イタリア、ベルガモ、COVID-19入院例40例を対象に心筋病理系統解析を実施しました。急性心筋壊死の所見の有無、心筋障害のメカニズムを調べました。結果、40例のうち14例(35%)に心筋壊死の所見を認め、主に左室有意でした。心筋壊死のない例と比べて、心筋壊死のある例は、女性、慢性腎臓病、症状発症から来院まで短時間の傾向がありました。75%以上の重症冠動脈疾患は心筋壊死の有無によって有意差を認めませんでした。心筋壊死のある14例中3例(21.4%)は1立方センチメートル以上の領域の急性心筋梗塞の証拠を認めましたが、11例(78.6%)では、巣状、1立方センチメートル未満、0.05立方ミリメートル以上の領域の20超の心筋壊死を認めました。心筋血栓は心筋壊死14例中11例に認め、14例中2例(14.2%)は心外膜冠動脈血栓、14例中9例(64.3%)は心筋毛細血管、動脈、小筋性動脈内の微小血栓を認めました。COVID-19陽性例、心筋内血栓塞栓を引き起こしている心筋微小血栓、COVID-19非感染の経皮的冠動脈形成術中の血栓、COVID-19感染のST上昇型心筋梗塞と比較しました。微小血栓はCOVID-19陰性の検体、経皮的冠動脈形成術後の血栓と比べて、フィブリン、末端複合体C5b-9免疫染色を有意に多く認めました。ST上昇型心筋梗塞においてはCOVID-19陽性、陰性の有意差を認めませんでした。心筋壊死の最も頻度の高い病理学的所見は微小血栓でした。微小血栓はCOVID-19陰性の心筋内血栓塞栓、COVID-19陽性または陰性のST上昇型心筋梗塞の冠動脈血栓とは組成が異なっていました。COVID-19感染の心筋への影響に対しては適切な抗血栓戦略が重要な可能性があります。詳しくは論文をご覧ください。
https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/CIRCULATIONAHA.120.051828
COVID-19関連心筋障害は微小血栓が病理学的に主体であるというイタリアからの報告です。日本のガイドラインにおいても、中等症、重症例には抗凝固療法を考慮と弱く推奨(弱い推奨/低の確実性のエビデンス:GRADE 2C)と記載されています。詳しくは、日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会COVID-19対策タスクフォース「日本版敗血症診療ガイドライン2020(J-SSCG2020)特別編COVID-19薬物療法に関するRapid/Living recommendations改訂第3.0版」をご覧ください。
https://www.jaam.jp/info/2021/info-20210128.html
COVID-19薬物療法ガイドラインは次々とアップデートされ、すでにガイドラインの第3.0版が出ていることに驚きです。ガイドラインでは7つの臨床疑問、薬剤に関して、軽症例、中等症、重症例に対してそれぞれ推奨または非推奨が記載されています。

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