2021/2/8、COVID-19流行とST上昇型心筋梗塞の機械的合併症の関係について調べた研究「COVID-19 pandemic is associated with mechanical complications in patients with ST-elevation myocardial infarction」の要旨をまとめました。

2021/2/8、COVID-19流行とST上昇型心筋梗塞の機械的合併症の関係について調べた研究「COVID-19 pandemic is associated with mechanical complications in patients with ST-elevation myocardial infarction」の要旨をまとめました。COVID-19流行、急性心筋梗塞受診、一次的経皮的冠動脈形成術手技の減少との関連の報告はありますが、ST上昇型心筋梗塞の機械的合併症、死亡率への影響は十分にわかっていませんでした。2020/4/7、日本政府による緊急事態宣言の前後、ST上昇型心筋梗塞における機械的合併症、死亡率に関して単施設後ろ向きコホート研究を実施しました。結果、緊急事態宣言前、ST上昇型心筋梗塞359例、緊急事態宣言後63例を解析しました。緊急事態宣言後は緊急事態宣言前と比べて、症状発症から遅れて受診した割合は有意に上昇(25.4% vs 14.2%, p=0.03)を認めました。遅れて受診の発生率はCOVID-19流行期間中は以前と比べて有意に上昇(incidence rate ratio (IRR), 2.41; 95% CI, 1.37 to 4.05; p=0.001, even after adjusting for month (IRR, 2.61; 95% CI, 1.33 to 5.13; p<0.01)を認めました。一次的経皮的冠動脈形成術は緊急事態宣言後は緊急事態宣言前と比べて有意に減少(68.3% vs 82.5%, p=0.009)していました。ST上昇型心筋梗塞の機械的合併症は、緊急事態宣言前359例中13例(3.6%)、緊急事態宣言後63例中9例(14.3%)、有意に増加(p<0.001)していました。しかしながら、院内死亡発生率(before, 6.2% vs after, 6.4%, p=0.95)は同等でした。COVID-19流行において、ST上昇型心筋梗塞の機械的合併症の増加を認めました。心臓発作の症状を認めた場合に迅速に救急要請を求めることの効果的な教育なしに、自粛生活を奨めることは、ST上昇型心筋梗塞の転帰悪化につながっている可能性があります。詳しくは論文をご覧ください。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33547221
国立循環器病研究センターからの報告で、緊急事態宣言中の自粛生活において、急性心筋梗塞の救急要請、病院到着の遅れ、自由壁破裂、切迫破裂、心室中隔穿孔、乳頭筋断裂等の心筋梗塞機械的合併症が増加していたとの報告です。機械的合併症の増加にも関わらず死亡率の差には至らなかったというのは国立循環器病研究センターだから出来ることであり、他の多くの地域では機械的合併症の増加は死亡率の増加につながります。心筋梗塞の症状を認めた場合は救急要請を躊躇わないことが重要であると論文ではまとめています。メディカルトリビューンでも記事になっていました。
https://medical-tribune.co.jp/news/2021/0216535260/index.html
お茶の水循環器内科では、緊急事態宣言後、今まで以上に積極的に心血管疾患の早期発見に力を入れています。心臓発作の発症は突然起こりますが、心臓の血管から見ると突然ではなく、冠動脈の狭窄は年々起こります。有意狭窄に至る前に発見、対処することが重要です。また、無症状、軽微な症状であっても有意狭窄が見付かった例は決して少なくありません。主治医から冠動脈CT、心臓MRI、頸動脈エコー、頭部MRI等の血管の評価を奨められた際にはぜひこの機会に検査を検討してみるようにしてください。

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