60歳以上、厳格な降圧療法により臨床的利益を得るために必要な時間を調べた研究「Time to Clinical Benefit of Intensive Blood Pressure Lowering in Patients 60 Years and Older With Hypertension: A Secondary Analysis of Randomized Clinical Trials」の要旨を和訳しました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35532917/
近年のガイドラインでは60歳以上において収縮期血圧150mmHg未満、可能であれば130mmHg未満が推奨されています。しかしながら、厳格血圧治療による失神、ふらつき等の有害性は早期に、心血管事象減少の有益性は長期に出現します。従って、特に余命が限られている場合のように、有益性の機会の低く、有害性がある場合を明確にする必要があります。60歳以上、厳格血圧治療の臨床的有益性をもたらすのに必要な時間を推定するために、高血圧、60歳以上、27414例、無作為化臨床試験の公開データの二次解析を実施しました。一次データが入手不可能な場合は症例単位生存データを再構成しました。2021年10月15日までPubMedにて公開試験を検索しました。厳格血圧降下と標準血圧降下を治療対象デザインにて比較しました。心筋梗塞、脳卒中、心血管死亡を含む各試験の主要有害心血管事象を主要評価項目としました。結果、6試験、一次データ2試験、再構成データ4試験、27414例、平均年齢70歳、女性56.3%を解析しました。収縮期血圧目標140mmHg未満の厳格血圧管理は主要有害心血管事象の21%減少と有意に関連(hazard ratio, 0.79; 95% CI, 0.71-0.88; P < .001)を認めました。厳格血圧管理群において500例あたり1例(absolute risk reduction [ARR], 0.002)の主要有害心血管事象を予防するために平均9.1ヶ月(95% CI, 4.0-20.6)が必要でした。同様に、200例あたり1例(ARR, 0.005)、100例あたり1例(ARR, 0.01)の主要有害心血管事象を回避するためには、それぞれ、19.1ヶ月(95% CI, 10.9-34.2)、34.4ヶ月(95% CI, 22.7-59.8)が必要と推定されました。本解析において、60歳以上、高血圧、厳格血圧管理は期待余命が3年以上の層において適応で、1年未満の層においては適応ではない可能性が示唆されました。
https://medical-tribune.co.jp/rensai/2022/0606545867
降圧薬は何歳まで継続すべきかはしばしば議論になりますが、解析の結果、余命が3年以上期待される場合は有益性が高く、そうではない場合は有益性が低いという結果が報告されました。意外なことにかなり歳を取ってでも有益性を認められたという印象です。
60歳以上、厳格な降圧療法により臨床的利益を得るために必要な時間を調べた研究「Time to Clinical Benefit of Intensive Blood Pressure Lowering in Patients 60 Years and Older With Hypertension: A Secondary Analysis of Randomized Clinical Trials」の要旨を和訳しました。