厚生労働省から抗菌薬適正使用の手引きが公開されました。下記リンクからPDFで閲覧可能です。
「抗微生物薬適正使用の手引き第一版(2017年6月1日)」→http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000166612.pdf
厚生労働省「薬剤耐性(AMR)対策について」→http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000120172.html
全51ページに及ぶ資料です。簡単に言うと、前半は「急性気道感染症」について、後半は「急性下痢症」について大きく2つに分けて抗菌薬適正使用の指針をまとめられています。急性上気道感染症とは、「感冒(いわゆる風邪)」と、「急性鼻副鼻腔炎」「急性咽頭炎」「急性気管支炎」の3つのことで、それぞれについて抗菌薬が不要な場合、抗菌薬の使用を考慮すべき場合についてそれぞれ詳しくまとめられています。ざっくりと要点のみ言うと、具体的には、
・感冒(いわゆる風邪)には抗菌薬を使用しないこと
・急性鼻副鼻腔炎で軽症の場合には抗菌薬を使用しないこと
・急性咽頭炎でA群β溶血性連鎖球菌による感染症でない場合には抗菌薬を使用しないこと
・急性気管支炎で百日咳菌による感染症ではない場合には抗菌薬を使用しないこと
と、多くの場合抗菌薬の使用を推奨していません。逆に、抗菌薬の使用を考慮する場合とは、具体的に、
・急性鼻副鼻腔炎で中等症以上の場合には抗菌薬の使用を考慮
・急性咽頭炎でA群β溶血性連鎖球菌による感染症の場合には抗菌薬の使用を考慮
・急性気管支炎で百日咳菌による感染症の場合には抗菌薬の使用を考慮
と、厚生労働省「抗微生物薬適正使用の手引き第一版」では、抗菌薬の使用を考慮する場合を非常に限定的と判断していることがわかります。後半の「急性下痢症」においても、
・急性下痢症に対しては、まずは水分摂取を励行した上で、基本的には対症療法のみ行うことを推奨する。
と、原則的に抗菌薬の使用を推奨していません。逆に、抗菌薬の使用を考慮すべき場合とは、具体的に
・中等症以上の水様下痢で海外渡航歴がある場合、
・中等症以上の水様下痢または血性下痢で菌血症、ショック状態、免疫不全状態、人工弁等の合併症リスクが高いと判断される場合、
・中等症以上の血性下痢で38度以上の高熱を認める場合、
と、厚生労働省「抗微生物薬適正使用の手引き第一版」では、抗菌薬の使用を考慮する場合を非常に限定的と判断していることがわかります。詳しくはぜひ原文をご覧ください。
「抗微生物薬適正使用の手引き第一版(2017年6月1日)」→http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000166612.pdf
特に医師、薬剤師、看護師、医療従事者、介護従事者、幼稚園、保育園、学校や給食、教育関係者の方、医学部生、薬学部生、看護学部生、医療系の学生もぜひこの機会に基礎知識として頭に入れておきましょう。むしろ、抗菌薬適正使用についてしっかりと理解し、抗菌薬適正使用を世の中に普及していくことが我々の役目です。
【お茶の水内科の診療指針】
実際には、A群β溶血性連鎖球菌が検出されなくても細菌性の急性咽頭炎というのは実臨床ではしばしば経験しますし、百日咳菌による急性気管支炎以外にも、マイコプラズマ菌による急性気管支炎、クラミドフィラニューモニエ菌による急性気管支炎で抗菌薬が必要と判断する場合もあります。急性副鼻腔炎に対しても同様です。また他の部位の感染症においても細菌性の感染症と診断し、抗菌薬が必要であると判断すれば必要に応じて抗菌薬を使用しています。一方で、明らかに風邪と診断される場合は抗菌薬を使用しないというのは当院も全く同じ方針です。抗菌薬の適正使用についてまとめましたのでご覧ください。
・抗菌薬の適正使用→http://ochanai.com/antibacterialdrugs
・風邪と風邪に似た風邪でない疾患→http://ochanai.com/coldandcoldmimic
・扁桃炎→http://ochanai.com/tonsillitis
・副鼻腔炎→http://ochanai.com/sinusitis
・百日咳→http://ochanai.com/pertussis
・マイコプラズマ→http://ochanai.com/mycoplasma
・クラミドフィラ→http://ochanai.com/chlamydophilapneumoniae
・胃腸炎→http://ochanai.com/gastroenteritis