塩分摂取量と血圧の関係を調べたINTERMAP試験の結果をまとめました。食事中の塩分摂取量が多ければ多いほど血圧が上がることは既に昔から知られています。さて、塩分以外の食事要素で、塩分摂取量と血圧の関係に影響を及ぼす因子はあるでしょうか。これを調べたのが今回のINTERMAP試験です。例えば仮に、塩分以外に血圧を上昇させる食事因子があるようであれば、塩分だけ注意したのでは不十分ということになりますし、逆に、仮に塩分以外の食事因子で血圧を低下させる因子があるのであれば、塩分摂取量による血圧上昇をキャンセルさせる効果を期待出来る要素がある訳で、降圧効果のある栄養素というのが見つからないかな、という夢のある試験です。INTERMAP(International Study on Macro / Micro nutrients and Blood Pressure)試験は、日本人も含む、40歳から59歳の男女4680例を対象に、ナトリウム摂取量も含む、食事と血圧の関係を網羅的に調べました。具体的には、蛋白質、脂質、ビタミン、ミネラル、アミノ酸など、80種類の栄養素の摂取状況を調べました。詳しくは論文をご覧ください。結果、ナトリウム摂取量と血圧の関係に、ナトリウム以外の食事因子で影響を及ぼす因子はないという結論がわかりました。つまり、塩分以外に気を付けなければならない食事因子はないこと、食事療法においては、減塩食事療法以外に、血圧を下げる夢の栄養素はないということがわかりました。残念というか、予想通りというか、何か魔法の栄養素が見付かればよかったんですが、そのような魔法の栄養素はなかったですよ、ということがわかりました。超簡単に言うと、高血圧症の食事療法としてはやはり、減塩第一で、他の食事因子はありませんでした、ということが、より明確になりました。
こういうことを言うと、医師はサプリメントや民間療法を否定したいだけという陰謀論が発生するんですが、仮に塩分以外に血圧を下げる食事因子が見付かれば、それは高血圧症の食事療法として新たな知見が判明する訳で、逆にないということがわかることも高血圧症の食事療法としては減塩のみに注意をしておけばいいということがはっきりする訳で、それも広い意味で医学の進歩なのです。夢のない、身も蓋もない結論ですが、これがエビデンスの蓄積です。なお、INTERMAP試験は食事療法と血圧の関係のみを調べた試験です。食事療法以外、運動療法、禁煙、節酒も食事療法と同様に重要です。論文内容を詳しく知りたい方は下記リンクから原文またはメディカルトリビューンの日本語記事をご覧ください。
→https://www.ahajournals.org/doi/pdf/10.1161/HYPERTENSIONAHA.117.09928
→https://medical-tribune.co.jp/news/2018/0309513305/index.html
循環器内科学の進歩は、新しい薬や医療機器の登場など目立ちやすい比較的派手なものから、このような目立ちにくい比較的地味なものまで様々ですが、食事療法は全ての生活習慣病の基本ですので、このようなエビデンスの蓄積も重要です。お茶の水循環器内科ホームページでは今後も重要な情報があれば適宜お知らせして行きます。
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