2019/12/18(水)、芸術との関わりと寿命との関係を14年間追跡した研究「The art of life and death: 14 year follow-up analyses of associations between arts engagement and mortality in the English Longitudinal Study of Ageing」の結果をまとめました。

2019/12/18(水)、芸術との関わりと寿命との関係を14年間追跡した研究「The art of life and death: 14 year follow-up analyses of associations between arts engagement and mortality in the English Longitudinal Study of Ageing」の結果をまとめました。イギリスのロンドン大学(University College London: UCL)の研究グループは、芸術との関わりが健康に与える影響を調べるために、加齢に関する様々な事象を追跡している登録研究(English Longitudinal Study of Ageing: ELSA)を用いて解析しました。ELSAは、2002年から開始され、2年に一回定期的な調査(wave)が行われており、今回は2004年のwave2の参加者8780例から2018年まで追跡可能であった6710人を対象としました。芸術との関わりは、劇場、コンサート、オペラ、美術館、画廊、展覧会と幅広く定義、芸術との関わりの機会は、全くなし1762例、低頻度(年に1回未満、年に1-2回)3042例、高頻度(2-3カ月に1回、毎月1回以上)1906例に分類されました。結果、平均年齢65.9歳、女性53.6%、中央値13.8年の追跡期間中に2001人(29.8%)が死亡、芸術との関わりの機会との関係としては、全くなし837例(47.5%)、低頻度809例(26.6%)、高頻度355例(18.6%)、1000人年当たり死亡リスクに換算すると、全くなし6.0(95%CI 5.7-6.3)、低頻度3.5(3.3-3.7)、高頻度2.4(2.2-2.7)となりました。芸術との関わりの機会なし群を基準に、交絡因子になり得る全ての変数を補正に加えた場合の死亡のハザード比は、低頻度0.86(95%CI 0.77-0.96)、高頻度0.69(95CI 0.59-0.80)でした。論文では、因果関係は不明なものの、芸樹との関わりは長寿のための社会的因子の一つであり、今後は芸術活動によってどのような違いはあるのかなど検討していくとまとめられています。論文では他に死亡リスクに与える影響も検討しており、死亡リスクの高さと関連していたのは、女性よりも男性、より高齢、未婚またはパートナーと同居していない、学歴が低い、無職、資産が少ない、単純労働や肉体労働に従事、抑うつ症状が強い、視力または聴力が低い、癌・肺疾患・心血管疾患、慢性疾患、身体活動量が少ない、ほぼ飲酒しない、喫煙者、認知機能が低い、孤独、親しい友人がいない、ひとり暮らし、趣味がない、社交的でない、地域活動に参加したことがない等でした。詳しくは論文をご覧ください。
https://www.bmj.com/content/367/bmj.l6377
芸術と健康の関係を調べたフランスならではの研究です。最近は、家族や友人関係、趣味の有無、地域との関わり合い等の社会的因子も、病気と同じくらいかそれ以上に重要であることが知られて来ました。健康の社会的決定要因(Social determinants of health: SDH)などと学問的には呼ばれている分野で、医学の守備範囲も広がって来ています。興味がある方はぜひ一歩覗いてみてください。
https://extranet.who.int/kobe_centre/ja/news/SDH_20130819

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