2019/10/9(水)、収入の変化と心血管疾患の関係を長期に追跡したアメリカの研究「Longitudinal Associations Between Income Changes and Incident Cardiovascular Disease: The Atherosclerosis Risk in Communities Study」の結果をまとめました。

2019/10/9(水)、収入の変化と心血管疾患の関係を長期に追跡したアメリカの研究「Longitudinal Associations Between Income Changes and Incident Cardiovascular Disease: The Atherosclerosis Risk in Communities Study」の結果をまとめました。高収入であることは心血管疾患のリスク低下因子であり、低収入であることは心血管疾患のハイリスク因子であることが知られています。アメリカにおいて1987年から行っている1万5792例のコホート研究「ARIC (Atherosclerosis Risk In Communities study)」の2016年までの解析です。1987年から1989年の調査と、1993年から1995年の調査との間、平均6年間の期間における収入の変化によって、収入が50%低下(収入低下群)、収入が変わっていないか変化が50%未満の群(収入変化なし群)、収入が50%以上増加(収入増加群)の3つの群に分類、中央値17年間追跡しました。結果、8989例(登録時の平均年齢53歳、黒人20%、男性43%)が追跡完了、収入低下群900例(10%)、収入変化なし群6284例(70%)、収入増加群1805例(20%)でした。社会的因子、行動因子等を調整後、心筋梗塞、致死的な冠動脈疾患、心不全、脳卒中は、収入低下群は、収入変化なし群と比較して、有意に上昇(HR 1.17 95%CI 1.03-1.32)を認めました。収入増加群は、収入変化なし群と比較して有意に低下(HR 0.86 95%CI 0.77-0.96)を認めました。17年間の追跡の結果、収入の変化と心血管疾患のリスクは関係があるということがわかりました。医療従事者は収入の変化が健康に及ぼす影響をより強く認識すべきであると論文でまとめています。詳しくは論文をご覧ください。
https://jamanetwork.com/journals/jamacardiology/fullarticle/2752544
健康に与える影響を調べたところ、生物身体的因子(Biophysical factors)よりも心理社会的因子(Psychosocial factors)の影響が非常に多いというのは、以前から健康の社会的決定要因(Social Determinants of Health: SDH)研究で言われていることです。医療提供者が直接的に出来ることは少ないことを知った上で、出来ることを考えていくのが仕事です。

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