2020/3/5(木)、フレイル高齢者における血圧管理と心血管疾患、死亡率の関係について調べたイギリスの研究「Blood pressure in frail older adults: associations with cardiovascular outcomes and all-cause mortality」の結果をまとめました。

2020/3/5(木)、フレイル高齢者における血圧管理と心血管疾患、死亡率の関係について調べたイギリスの研究「Blood pressure in frail older adults: associations with cardiovascular outcomes and all-cause mortality」の結果をまとめました。フレイルではない高齢者(non-frail older people)において収縮期血圧120未満を目指すことのベネフィットは確立していますが、フレイル高齢者(frail older people)において一律に血圧を下げることのベネフィットは明確ではありません。75歳以上のフレイル高齢者において血圧と心血管疾患、死亡率の関係を明らかにするために、41万5980例の電子健康記録(electronic health records)を用いて、後方視的に解析しました。結果、心血管疾患のアウトカムは、収縮期血圧150mmHg以上で上昇を認めました。収縮期血圧130-139mmHg以上であることは85歳以上の中程度から重度のフレイル高齢者において死亡率低下と関連していました。具体的には、75-84歳で収縮期血圧150-159mmHgは130-139mmHgに比べて、死亡率は非フレイル高齢者で6%低下(HR 0.94 95%CI 0.92–0.97)、中程度から重度のフレイル高齢者で16%低下(HR 0.84 95%CI 0.77–0.92)を認めました。収縮期血圧130mmHg未満、拡張期血圧80mmHg未満は終末期の血圧変動の自然経過とは無関係に死亡率の上昇と関連していました。75歳以上のフレイル高齢者において、血圧130/80未満は死亡率の増加と関連していました。85歳以上、75-84歳のフレイル高齢者においては高血圧は死亡率の増加に関連しないことがわかりましたが、これは併存疾患によるものかも知れません。フレイル高齢者に対して積極的に降圧を行うことの是非は今後検討される必要があると論文ではまとめています。詳しくは論文をご覧ください。
https://academic.oup.com/ageing/advance-article/doi/10.1093/ageing/afaa028/5775492
カルテ記載の分析による後方視的研究なので、因果関係の証明には限界がありますが、フレイル高齢者においては過度な降圧は不要かも知れないという研究結果です。そもそも血圧を下げるのは将来の心血管疾患、脳血管疾患、慢性腎臓病等を予防するためであり、80代、90代の高齢者に一律の降圧を強いる必要はないんじゃないかという意見は以前からあり、私も弾力的で良いのではないかと考えています。そもそも心血管疾患、脳血管障害、慢性腎臓病等になっても良いという人は血圧を下げる必要がありません。自分が何で死にたいかは人生観の問題ではあり、エビデンスでは答えが出ない問題ですね。詳しくは主治医とご相談ください。

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