2020/2/27(木)、高齢者の不定愁訴における急性冠症候群とトロポニン検査について調べた研究「Troponin Testing and Coronary Syndrome in Geriatric Patients With Nonspecific Complaints: Are We Overtesting ?」の結果をまとめました。

2020/2/27(木)、高齢者の不定愁訴における急性冠症候群とトロポニン検査について調べた研究「Troponin Testing and Coronary Syndrome in Geriatric Patients With Nonspecific Complaints: Are We Overtesting ?」の結果をまとめました。救急外来を不定愁訴(nonspecific complaints: NSCs)で受診する高齢者で、トロポニン検査、非特異的(atypical)な急性冠症候群はしばしば経験しますが、急性冠症候群の率やトロポニン検査の有用性は明らかではありませんでした。2017年1月から6月まで、救急外来を不定愁訴で受診した65歳以上の高齢者を対象に後方視的に解析しました。不定愁訴とは、脱力(weakness)、目眩(dizziness)、倦怠感(fatigue)などで後方視的に定義しました。発熱(fever)など特定の主訴が明確なものは除外しました。30日以内の急性冠症候群、診断におけるトロポニン検査の特徴について解析しました。結果、1146例の受診のうち、発熱や明確な主訴を認めた552例は除外、残りの594例のうち412例(69%)に対してトロポニン検査を行い、その後を追跡ました。平均年齢78.7 ±8.3歳、女性58%、トロポニンの上昇は81例(20%)に認め、急性冠症候群は5例(1.2%)に認めました。急性冠症候群に対するトロポニン検査の感度100%(95%CI 48% to 100%)、特異度81%(95%CI 77% to 85%)でした。
トロポニンの上昇を認めたうちの93.8%は偽陽性でした。トロポニン上昇を認めた全例は入院としましたが、その後冠動脈造影を実施したのは1例のみで、再灌流療法の適応とはなりませんでした。高齢者の不定愁訴において急性冠症候群を疑うことはあっても、急性冠症候群は稀であり、再灌流療法の適応は1例もありませんでした。偽陽性率の高さを考えると、一律なトロポニン検査は推奨は出来ないだろうと論文ではまとめています。詳しくは論文をご覧ください。
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1111/acem.13766
高齢者の急性冠症候群は非特異的な主訴であることは珍しくなく、鑑別診断として常に注意が必要ですが、全員に一律に検査を行うほどではなかったという研究結果です。偽陽性は問題ですが、偽陰性は1例もなかったというのは重要です。急性冠症候群はとにかく見落としが一番いけないので、偽陰性のない検査というのは重宝します。


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