2020/3/25(水)、COVID-19と心筋障害と死亡率の関係を調べた中国武漢の研究「Association of Cardiac Injury With Mortality in Hospitalized Patients With COVID-19 in Wuhan, China」の結果をまとめました。

2020/3/25(水)、COVID-19と心筋障害と死亡率の関係を調べた中国武漢の研究「Association of Cardiac Injury With Mortality in Hospitalized Patients With COVID-19 in Wuhan, China」の結果をまとめました。2019年12月以降、COVID-19は全世界で感染拡大を起こしていますが、心筋障害(cardiac injury)のと関係の情報は限られていました。心筋障害と死亡率の関係を調べるために、2020年1月から2月まで中国武漢の武漢大学人民病院にてコホート研究を実施しました。COVID-19感染例に対し、心筋障害の有無について調べました。結果、COVID-19の入院管理中の416例を対象、平均年齢64歳(21-95歳)、女性50.7%、頻度の多い症状は発熱80.3%、咳34.6%、息切れ28.1%でした。82例(19.7%)に心筋障害を認めました。心筋障害を認めなかった群と比較して、高齢、併存疾患数、白血球数、CPR、プロカルシトニン、CK-MB、ミオヘモグロビン、高感度トロポニンI(0.19 95%CI 0.08-1.12 vs <0.006 95%CI <0.006-0.009)、NT-proBNP(1689 95%CI 698-3327 vs 139 95%CI 51-335)、AST、Cr(1.15 95%CI 0.72-1.92 vs 0.64 95%CI 0.54-0.78)、放射線画像所見として、多発斑状陰影、すりガラス陰影(64.6% vs 4.5%)を認めました。心筋障害がある群では、非侵襲的機械換気(46.3% vs 3.9% P<0.001)、侵襲的機械換気(22.0% vs 4.2% P<0.001)の必要性が有意に増加しました。合併症の発生数について、急性呼吸窮迫症候群(58.5% vs 14.7% P<0.001)、急性腎障害(8.5% vs 0.3 P<0.001)、電解質平衡異常(15.9% vs 5.1% P=0.003)、低蛋白血症(13.4% vs 4.8% P=0.01)、凝固異常(7.3% vs 1.8% P=0.02)と有意差を認めました。心筋障害のある群では心筋障害のない群と比べて、有意に高い死亡率(42 of 82 51.2% vs 15 of 334 4.5% P<0.001)を認めました。COX回帰分析モデルでは、高い死亡率は、発症(HR 4.26 95%CI 1.92-9.49)、入院(HR 3.41 95%CI 1.62-7.16)、いずれの場合も認めました。COVID-19において心筋障害の合併の頻度は高く、入院中の死亡率上昇に関連していました。詳しくは論文をご覧ください。
https://jamanetwork.com/journals/jamacardiology/fullarticle/2763524
中国武漢の論文で、心筋障害がある場合には人工呼吸管理の必要性4.2%から22.0%に、死亡率が4.5%から51.2%に跳ね上がるという報告です。全身状態が悪くなった結果、トロポニンやNT-proBNPの上昇と解釈することも出来ますが、COVID-19が直接的に急性のウイルス性心筋炎を引き起こすのではないかという説もあるようです。しかし、院内の二次感染予防の観点から積極的に心臓カテーテル検査、心筋生検を実施したりは出来ていないようです。また新しいことがわかればお知らせします。


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