2020/4/23（木）、進行腎臓病における侵襲的または保存的治療後の健康状態について調べた研究「Health Status after Invasive or Conservative Care in Coronary and Advanced Kidney Disease: ISCHEMIA-CKD Research」の結果をまとめました。「ISCHEMIA-CKD」試験において、進行慢性腎臓病（eGFR 30未満または透析中）で、安定虚血性心疾患で、中程度から重度の虚血を認める例において、ガイドラインベースの薬物療法に血管造影、血行再建を加えた侵襲的戦略群と、ガイドラインベースの薬物療法のみの保存的戦略群で、死亡、心筋梗塞のリスクに有意差を認めませんでした。試験の二次目標は狭心症関連健康状態（angina-related health status）の評価です。シアトル狭心症問診票（Seattle Angina Questionnaire: SAQ）を、無作為化前、1.5ヶ月後、3ヶ月後、6ヶ月後、その後6カッ月ごとに評価しました。一次転帰はSAQサマリースコア（0点から100点までのスコアで、スコアが高いほど狭心症の頻度が少なく、健康の質が高いことを示す）です。ベイズ統計の混合効果累計確率モデルを用いて、侵襲的戦略の治療効果を推定しました。結果、777例中705例の健康状態を評価しました。49%は無作為化前に狭心症症状はありませんでした。3ヶ月後の時点において、侵襲的戦略群と保存的戦略群との間のSAQサマリースコアの平均の差は、2.1ポイント（95%CI −0.4 to 4.6）で、侵襲的戦略のほうが好ましい結果でした。3ヶ月後時点のスコア平均差は、ベースラインにおいて毎日または毎週狭心症がある例において最大（10.1ポイント 95%CI 0.0 to 19.9）で、ベースラインにおいて毎月ある例においても同様（2.2ポイント 95%CI −2.0 to 6.2）、ベースラインにおいて狭心症がなし、またほぼなかった例においては差はほとんど認められません（0.6ポイント 95%CI −1.9 to 3.3）でした。6ヶ月後の時点では、両群間の差は減弱（0.5ポイント 95%CI −2.2 to 3.4）していました。安定虚血性心疾患で中程度から重度の虚血を認め、進行慢性腎臓病例において、侵襲的戦略は保存的戦略と比べて、狭心症関連健康状態に関して、相当または持続的なベネフィットを認めませんでした。詳しくは論文をご覧ください。
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1916374
「ISCHEMIA」試験関連の4つ目の報告で、腎機能低下例を対象にした「ISCHEMIA-CKD」試験のQOLの評価です。「ISCHEMIA」試験全体においては、早期侵襲的戦略は保存的戦略と比べて、生命予後を改善させなかったものの、QOLを改善させたという結論でしたが、進行慢性腎臓病のみに対象を限定した「ISCHEMIA-CKD」試験においては、生命予後もQOLも明らかな改善は認めなかったという報告です。腎機能低下例においては保存的戦略が進められる結果と言えるでしょう。「ISCHEMIA-CKD」試験については下記まとめもご覧ください。
「2020/4/23（木）、進行腎臓病における冠動脈疾患の管理についての研究「Management of Coronary Disease in Patients with Advanced Kidney Disease: ISCHEMIA-CKD Research」の結果をまとめました。」
https://ochanomizunaika.com/15758
「ISCHEMIA」試験全体については下記まとめをご覧ください。
「2020/4/9（木）、安定冠動脈疾患に対する侵襲的治療と保存的治療を比較した研究「Initial Invasive or Conservative Strategy for Stable Coronary Disease: ISCHEMIA Research」の結果をまとめました。」
https://ochanomizunaika.com/15162
「2020/4/9（木）、冠動脈疾患における侵襲的治療と保存的治療の健康状態転帰を比較した研究「Health-Status Outcomes with Invasive or Conservative Care in Coronary Disease: ISCHEMIA Research」の結果をまとめました。」
https://ochanomizunaika.com/15170