2020/4/29(水)、急性心筋梗塞において疾患自体に由来する死亡率と手技関連死亡率と病院のパフォーマンスについて調べた研究「Performance of Hospitals When Assessing Disease-Based Mortality Compared With Procedural Mortality for Patients With Acute Myocardial Infarction」の結果をまとめました。

2020/4/29(水)、急性心筋梗塞において疾患自体に由来する死亡率と手技関連死亡率と病院のパフォーマンスについて調べた研究「Performance of Hospitals When Assessing Disease-Based Mortality Compared With Procedural Mortality for Patients With Acute Myocardial Infarction」の結果をまとめました。経皮的冠動脈形成術(percutaneous coronary intervention: PCI)の質は一般的にリスク調整死亡率によって評価されます。しかし、この評価基準では特にハイリスク群において手技のリスクを悪く評価していしまう可能性があります。急性心筋梗塞において、病院レベルの疾病特異的死亡率と、経皮的冠動脈形成術の手技関連死亡率の関係の相関と再分類を行うために、2011年から2017年まで、1型非ST上昇型心筋梗塞(non–ST-segment elevation myocardial infarction: NSTEMI)、ST上昇型心筋梗塞(ST-segment elevation myocardial infarction: STEMI)の連続症例を登録した「Chest Pain–MI Registry」と、非ST上昇型心筋梗塞、ST上昇型心筋梗塞の疑いで経皮的冠動脈形成術を行った連続症例を登録した「CathPCI Registry」から、病院レベル観察横断多施設解析を実施しました。全国心血管データ登録研究の2つのレジストリから、各病院において、急性心筋梗塞の疾患ベース余剰死亡率(disease-based excess mortality ratio: EMR-D)を算出、「Chest Pain–MI Registry」を用いてリスク調整後の急性心筋梗塞の余剰死亡率、「CathPCI Registry」を用いて経皮的冠動脈形成術の手技ベース余剰死亡率(procedural-based excess mortality ratio: EMR-P)を算出しました。両方の登録研究、625施設、「Chest Pain–MI Registry」から776890例(男性65.6%、白人80.0%、平均年齢64歳)、「CathPCI Registry」から853386例(男性68.3%、白人81.0%、平均年齢63歳)のデータを収集しました。疾患ベース余剰死亡率と手技ベース余剰死亡率のスペルマン順位相関係数は、ρ 0.53(95%CI 0.47-0.58)で、中程度の相関を示唆していました。疾患ベースリスク調整死亡率の最もパフォーマンスの高い群において、208施設のうち90施設(43.3%)は、手技リスク調整死亡率が低いカテゴリに分類されました。疾患ベースリスク調整死亡率が最も低い群においては、208施設のうち92施設(44.2%)は、手技リスク調整死亡率は高いカテゴリに分類されました。全体のコホート結合のBland-Altmanプロット、手技ベース余剰死亡率と疾患ベース余剰死亡率の平均差は0.49%で、手技死亡率は疾病ベース死亡率と比べて高く、有意差(95%CI, –1.61% to 2.58%; P<0.001)を認めました。急性心筋梗塞で、心原性ショックまたは心停止を起こした例においては、手技ベース余剰死亡率と疾患ベース余剰死亡率の間の平均差は0.64%(95%CI –4.41% to 3.12%; P<0.001)で、手技ベース余剰死亡率は疾患ベース死亡率よりも低値でした。急性心筋梗塞を治療する病院において、手技転帰と疾患ベース転帰は中程度の相関関係があることを示唆しています。経皮的冠動脈形成術のパフォーマンスが最も高い病院のうち半数近くは、疾患ベースの評価基準による判定では、パフォーマンスが低く再分類されました。心原性ショック、心停止例において、疾患ベース評価基準は手技ベース評価基準と比べて、高い死亡率と関連しており、病院がハイリスク群を避けている可能性を示唆しているかも知れないと論文ではまとめています。詳しくは論文をご覧ください。
https://jamanetwork.com/journals/jamacardiology/article-abstract/2764766
少し難しい論文ですが、疾患ベース余剰死亡率と手技ベース余剰死亡率を比較解析するというアプローチの研究です。ざっくりとしたイメージで説明すると、難しい病変であれば手技も難しくなるため両者に相関関係はあるのと、また、ハイリスクな症例は死亡率が高くなるのでハイリスク症例ばかりを積極的に受け入れる病院は見かけ上は治療成績が悪く見えてしまい、ハイリスク症例を診ないで、安全な症例ばかりを受け入れた病院のほうが治療成績は良く見えてしまうというジレンマがあります。フィクションですが、がんの手術成績ランキングにおいて、良性の腫瘍だけを摘出する病院があった場合、がんの再発リスクは最も低く、治療成績ランキング一位になるだろうという話があります。


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