2020/6/2、急性虚血性脳卒中において、血栓溶解療法の病院到着から投与開始までの時間と1年後予後の関係について調べた研究「Association Between Thrombolytic Door-to-Needle Time and 1-Year Mortality and Readmission in Patients With Acute Ischemic Stroke」の結果をまとめました。急性虚血性脳卒中において、組織型プラスミノーゲンアクティベーター(tissue plasminogen activator: tPA)を入院後早期に静脈内投与するほど、退院時の死亡率減少、3ヶ月後の機能転帰改善と関連していますが、病院到着後から投与開始を短縮することが長期転帰を改善するかどうかは十分にわかっていませんでした。急性虚血性脳卒中において、tPAの静脈内投与の病院到着から投与開始までの時間(door-to-needle times)を短くすることは、長期転帰を改善するかどうか調べるために、後ろ向きコホート研究を実施しました。2006年から2016年まで、65歳以上で、急性虚血性脳卒中にて4.5時間以内にtPA投与を受けた、「Get With The Guidelines-Stroke participating hospitals」、2017年まで追跡しました。tPA静注の病院到着から投与開始までの時間、一次転帰は1年後の全死亡、再入院、全死亡と再入院の複合としました。結果、4.5時間以内にtPAの投与を受けた61426例、平均年齢80歳、男性43.5%、病院到着から投与開始までの時間の平均は65分(四分位範囲49-88分)でした。tPA治療が病院到着から投与開始まで45分以上であった48666例(79.2%)は、45分以内であった例と比べて、死亡率高値(35.0% vs 30.8% adjusted HR, 1.13 [95% CI, 1.09-1.18])、再入院高値(40.8% vs 38.4%; adjusted HR, 1.08 [95% CI, 1.05-1.12])、死亡率と再入院の複合(56.0% vs 52.1%; adjusted HR, 1.09 [95% CI, 1.06-1.12])でした。tPA治療が病院到着から投与開始までの時間が60分以上だった34467例(55.9%)は、60分以内だった例と比べて、全死亡(35.8% vs 32.1% adjusted hazard ratio [HR], 1.11 [95% CI, 1.07-1.14])、再入院(41.3% vs 39.1%; adjusted HR, 1.07 [95% CI, 1.04-1.10])、全死亡と再入院(56.8% vs 53.1%; adjusted HR, 1.08 [95% CI, 1.05-1.10])に有意差を認めました。90分以内においては、病院到着から投与開始までの時間が15分間増加するごとに、全死亡(adjusted HR, 1.04 [95% CI, 1.02-1.05])が増加、90分以降では全死亡(adjusted HR, 1.01 [95% CI, 0.99-1.03])、再入院(adjusted HR, 1.02; 95% CI, 1.01-1.03)、全死亡と再入院(adjusted HR, 1.02 [95% CI, 1.01-1.03])でした。65歳以上の急性虚血性脳卒中で、tPA治療を受ける場合、病院到着から投与開始までの時間が短いことは1年後の死亡率、再入院の低下と関連していました。血栓溶解療法の治療時間は短ければ短いほど良いという結果でした。詳しくは論文をご覧ください。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32484532
脳梗塞超急性期に対する血栓溶解療法の効果ですが、やはり病院到着後も早ければ早いほど良いという報告です。治療開始が15分間遅延するごとに死亡リスクが4%増加するという解析結果で、この論文は病院到着後の研究ですが、病院到着するまでの間においてもやはり早ければ早いほど良いでしょう。メディカルトリビューンでも記事になっていました。
https://medical-tribune.co.jp/news/2020/0619530640
2020/6/2、急性虚血性脳卒中において、血栓溶解療法の病院到着から投与開始までの時間と1年後予後の関係について調べた研究「Association Between Thrombolytic Door-to-Needle Time and 1-Year Mortality and Readmission in Patients With Acute Ischemic Stroke」の結果をまとめました。